[M-IS20] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

[MIS20-P01] 新学術研究「固体地球と氷床の相互作用」5年間の活動報告

*福田 洋一¹、西島 潤²、風間 卓仁³、中村 和樹⁴、土井 浩一郎¹、菅沼 悠介¹、奥野 淳一¹、新谷 昌人⁵、金田 平太郎⁶、青山 雄一¹、三浦 英樹¹ (1.情報・システム研究機構 国立極地研究所、2.九州大学大学院工学研究院、3.京都大学大学院理学研究科、4.日本大学工学部、5.東京大学地震研究所、6.中央大学理工学部)

キーワード：GIA、氷床変動、海面上昇、東南極

科学研究費の新学術領域研究の１つとして、2017年度に開始した「熱～水～物質の巨大リザーバ 全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床」（領域代表：川村賢二） (http://grantarctic.jp)も、最終年度を迎えた。本領域は、南大洋研究と関連した3つの課題(A01-1～A01-3)、南極氷床に関連した２つの課題 (A02-1～A02-2)、新たな探査方法に関連した課題(A03)、および、統合的モデリングに関連した課題(A04)の7つの計画研究からなり、南極氷床や南大洋が全球環境変動におよぼす影響のシステムとしての理解や将来予測などを目的として研究を進めてきた。
この内、南極氷床変動は、海水準上昇や海洋循環を通して全球的環境変動と密接に関係しており、将来環境 予測にも不可欠な要因である。このため、従来からも地形学的・地質学的調査、測地観測や衛星データを利用した研究が進められているが、そこでの大きな誤差要因が氷床荷重に対する固体地球の粘弾性応答（Glacial　Isostatic Adjustment: GIA）の不確定性にある。そこで、我々が担当する「A02-2:固体地球と氷床の相互作 用」では、GIAをキーワードとし、GIAに関連した現場観測データが特に不足している昭和基地を含む東南極の露岩や沿岸地域で、地形・地質調査や絶対重力測定・測地観測などを重点的に実施し、衛星データや数値モデリングの結果と合わせ、GIAモデルの高精度化や過去の定量的な氷床変動史の復元により未来の全球的環境変動予測モデルの精度向上を目指した。
我々のこれまでの研究として、現地観測としては、2017年度に、昭和基地周辺およびリュツォ・ホルム湾の複数の露岩地域での絶対重力測定やGNSS観測、地形調査や表面露出年代測定用試料の採取、2018年度には、トロール基地（ノルウェー）およびマイトリ基地（インド）において絶対重力測定を、また、2019年度には、ジャンボゴ基地（韓国）、マリオズッケリ基地（イタリア）でのぜんったい重力測定、マイトリ基地（インド）での湖沼コア・サンプリングを行っており、2020年度はCOVID-19のため観測はできなかったが、2021年度には昭和基地周辺での絶対重力測定などを実施している。一方、これらと並行して、取得したデータや資料の解析を進めるとともに、当初の目的であったGIAモデル研究との統合をはかることで、さまざまな成果が得られつつある。
COVID-19の影響により、本計画研究では一部の経費を繰り越し、2022年度も解析等を継続する予定であるが、ポスター発表では、我々のこれまでの研究成果の概要について報告する。
なお、本研究は、JSPS科研費(17H06321)の助成を受けて実施したものである。記して謝意を表する。