13:45 〜 14:00
[MIS22-01] 近代の日記天気記録と気象観測データの照合による古天気資料の定量化
★招待講演
キーワード:古日記天気記録、詳細率、定量化
古日記の天気記録は、日単位ないしそれ以上という、古気候プロキシとしては格段に高い時間分解能を持つため、とりわけ近世日本の気候復元に広く用いられている。しかし、その記述内容は定性的かつ主観的で、そこから降水量等の客観的数値を推定することには課題がある。本研究では、日記天気記録の持つ気象・気候に関する情報を最大限に引き出すため、「天気記述の詳細さ」に着目し、定性的な天気記述を定量的な気象・気候変数に変換する手法の開発に取り組む。
ここでは、対象期間における天気記録の総日数に占める、詳細な天気記録(すなわち、1日の天気を「晴」「雨」など1語で表すのではなく、日内の天気変化や現象の規模・強度などに関する情報を含む天気記録)の日数の割合を「詳細率」と定義する。天気記録の詳細率が日記に降水が記録される閾値と高い負相関を有することは確かめられている(庄ほか,2017)。この関係を用い、江戸時代に記録された鹿児島や京都の日記について、毎年の季節ごとの詳細率を求め、季節ごとの降水日数(何らかの降水現象に関する記録がある日数)に補正を加えた。その結果、補正前の降水日数の経年変動に見られた不自然な傾向的変化(詳細率の上昇傾向に対応して降水日数も上昇)が取り除かれ、歴史的な多雨年として知られる年に顕著なピークが表れるなど、他の資料から得られている知見との整合性が高まった。このことは、詳細率を指標とすることで、日記記録者や記録時期による天気判断基準の差異を調整し、多数の記録者や記録時期の異なる日記を合成して長期にわたる降水量等の時系列データを復元できる可能性があることを示唆するものといえる。現在は、日記に記録された天気と実際に生起した気象現象との関係をより詳細に把握するため、気象観測開始後の明治・大正期の資料を用いて、日記天気記録と気象官署における4時間毎(1日6回観測)の降水量データとの照合を様々な日記について進めているところである。
ここでは、対象期間における天気記録の総日数に占める、詳細な天気記録(すなわち、1日の天気を「晴」「雨」など1語で表すのではなく、日内の天気変化や現象の規模・強度などに関する情報を含む天気記録)の日数の割合を「詳細率」と定義する。天気記録の詳細率が日記に降水が記録される閾値と高い負相関を有することは確かめられている(庄ほか,2017)。この関係を用い、江戸時代に記録された鹿児島や京都の日記について、毎年の季節ごとの詳細率を求め、季節ごとの降水日数(何らかの降水現象に関する記録がある日数)に補正を加えた。その結果、補正前の降水日数の経年変動に見られた不自然な傾向的変化(詳細率の上昇傾向に対応して降水日数も上昇)が取り除かれ、歴史的な多雨年として知られる年に顕著なピークが表れるなど、他の資料から得られている知見との整合性が高まった。このことは、詳細率を指標とすることで、日記記録者や記録時期による天気判断基準の差異を調整し、多数の記録者や記録時期の異なる日記を合成して長期にわたる降水量等の時系列データを復元できる可能性があることを示唆するものといえる。現在は、日記に記録された天気と実際に生起した気象現象との関係をより詳細に把握するため、気象観測開始後の明治・大正期の資料を用いて、日記天気記録と気象官署における4時間毎(1日6回観測)の降水量データとの照合を様々な日記について進めているところである。