日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25] 惑星火山学

2022年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、コンビーナ:下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

09:45 〜 10:00

[MIS25-04] メソスケール大気シミュレーションを用いた火星火山周辺における風力発電の検討

*西川 泰弘1 (1.高知工科大学 システム工学群)

キーワード:火星火山、風力発電

惑星探査において電源の確保は重要な課題の一つであり、現在までにさまざまな方法がとられている。現在、火星上での電源確保には放射性同位体熱電気転換器(RTG)を除いて、ソーラーパネルによる太陽光発電が唯一の発電方法と見られている。しかし、ソーラーパネルはダストによる光量変化の影響を受けやすく、火星上ではダストの降り積りによる電力低下を考慮に入れなければならず、長期観測においては深刻な問題を引き起こす場合もある。実際に、2022年1月に発生した大嵐では InSight mission の着陸機が電力不足でセーフモードに入るなどの事例があった。嵐が通過した後にセーフモードは解除されたが、依然として発電量は低下したままである。今回、私は火星上での新たな電源確保の手段として風力発電を提案する。全球での大気シミュレーションを比較したところ、山から吹き下ろす slope wind が風力発電において重要であると考えた。slope wind の強さはその傾斜の角度と長さに比例するため、巨大な火星火山の麓では激しい風が定期的に吹くと考えられる。また、火星表面は熱慣性が小さいため表面温度の変化が激しく、それに従って火星火山から吹き下ろす slope wind も激しくなる。以上の点から火星での風力発電の検討を、特に火星上で最も風の強い場所の一つである Arsia Mons 周辺で吹き下ろす slope wind に着目して行った。また、比較対象として Chryse Planitia と Green Valley でも発電量の計算を行い、結果として Arsia Mons での1日の平均風力発電量が他の2地点と比べて 9 -18倍大きいことがわかった。また、発電量を機器の単位重さに換算することで、全球範囲で風力発電量が太陽光発電量比較し、風の強い場所や日照時間の短い場所(季節)では、風力発電量が太陽発電量を上回ることを示すことができた。