日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P01~P20

2022年5月29日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (1) (Ch.01)

13:45 〜 15:15

[O08-P06] 高性能の糸電話を作るには

*髙橋 悠馬1、渥美 さやほ1、梅木 涼太1、江渡 祐太朗1、鈴木 愛菜1吉田 亮祐1 (1.静岡県立下田高等学校)


キーワード:波、地震、糸電話

波の伝わり方を理解することは、地震のように地球上で起こる様々な現象を理解する上で役に立つ。糸電話は2つのコップの間に糸を通して声の振動が伝わる理科工作であり、糸やコップの材質が音波の伝わりやすさに影響する。しかし、糸やコップの材質には多数の組み合わせが考えられ、何がどう影響するか実際には検証の余地がある。本研究では、糸の材質や長さに着目して音の伝わりやすさをオシロスコープで調べた。第一に、ナイロン糸では音の半減長が25 mだった。第二に、金属線の場合、ナイロンと比べて銅線は音を伝えやすく、鉄、真鍮、ステンレス、ピアノ線は音を伝えにくかった。加えて、糸電話のコップと糸の接合部や糸の曲げについても探究した。

【方法】スピーカー側のコップでは録音した人間の声を再生し、この反対側のコップにはオシロスコープの受信機を設置し、同じ高さでコップの口の部分が機械に当たらないようにした。測定結果はオシロスコープの画面上で縦軸に振幅、横軸に時間を取った。音の伝わりやすさの指標には、振れ幅の最大値を使った。

【結果】ナイロン製の糸で長さを変えて音の減衰を調べたところ、半減長は25 mだった。ナイロン製の糸で太さを変えたところ、直径0.35 mmと直径0.57 mmで音の伝わりやすさに違いは見られなかった。糸を金属線に変えたところ、ナイロンと比べて銅線は音を伝えやすく、鉄、真鍮、ステンレス、ピアノ線は音を伝えにくかった。さらに、銅線の糸で太さを変えたところ、直径0.23 mmと直径0.55 mmで音の伝わりやすさに大きな違いはなかった。

【考察】糸が長いほど音は小さくなると考えられ、ナイロン糸では半減長は25 mであったので、下田高校職員室と自分たちの教室のように100 m離れた場所を糸電話でつなぐと音の大きさは元の16分の1になるはずである。糸の太さが音の伝わりやすさに与える影響は少ないが、金属線の場合は細いほど伝わりやすくなる傾向がわずかにあるかもしれない。金属線のうち銅線はとりわけ音が伝わりやすい一方で、真鍮(銅と亜鉛)、ステンレス(鉄とクロム)、ピアノ線(鉄と炭素)といった合金は音が伝わりにくいと分かった。また、糸の接合部に関連して、実験を進める中で、コップと糸の接着を強化し、糸にかかる力を大きくするアイディアをひらめいた。通常は糸をセロファンテープでコップに貼りつけていたが、新しく爪楊枝に糸を括り付けコップに固定する方法を採用して音の伝わり方を調べた。この新しい方法で作った糸電話は、音が伝わりやすかった。

【展望】本校の校舎はL字形になっているので職員室と教室を室内でつなぐには、糸を1回以上曲げることになる。固定された金属の棒に沿って糸電話の糸を直角に曲げると、糸電話の糸が銅線とナイロン糸のどちらでも、音が伝わりづらくなった。固定された金属の棒に、銅線またはナイロン糸で作った輪をかけ、この輪を支点にして糸電話の糸を曲げると、銅線とナイロン糸のどのような組み合わせでも、音を伝えやすくなった。糸の曲げ方に着目して、さらに研究を深めていきたい。現段階では、長い距離を糸電話でつなぐには、接合部分により大きな力をかけられるように補強材を使用し、媒質には細い銅線を使うとよい、ということが分かった。