日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P01~P20

2022年5月29日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (1) (Ch.01)

13:45 〜 15:15

[O08-P20] 伊豆半島南北のマイクロプラスチック比較

*今井 啓太2、*進士 陽生2、*村山 陽祐2、*若森 空大2、*浅川 秀太郎1、*塚田 心優1、*西原 千紘1、渡邉 充司1、吉田 亮祐2 (1.静岡県立韮山高等学校、2.静岡県立下田高等学校)


キーワード:マイクロプラスチック、伊豆半島

プラスチックは今や地球上のあらゆるところに見られる。5 mm以下のマイクロプラスチックを調べた研究は世界的に急増しているものの、静岡県の伊豆半島での知見は限られており、この地はほぼ手つかずだった。共同研究2年目ということをふまえて、我々は「沼津港に流れ込む狩野川」と「下田港に流れ込む稲生沢川」を研究対象とし、韮山高校は水の中に、下田高校は砂の中に含まれるマイクロプラスチックの調査をそれぞれ担当した。マイクロプラスチックの検出には、水溶液の密度を使った手法、ブルーライト照射による蛍光の観察、ナイルレッドおよび樹脂用染料による染色を使い分け、高校の設備でできる最適な実験条件を見つけるため研究を進めてきた。

韮山高校によるマイクロプラスチック調査

【方法】水の中に含まれるプラスチック片の調査を担当した。試料は狩野川3カ所(沼津市)、沼津港1カ所(沼津市)、柿田川2カ所(清水町)、城池親水公園1カ所(伊豆の国市)、稲生沢川1カ所(下田市)で得た。採取にあたっては、一定時間エンジンポンプを稼働させて推定500 Lの水を吸い上げ、0.315 mmのプランクトンネットでろ過した。プラスチック片以外の物質は、水酸化カリウムおよび過酸化水素による分解と、70%ヨウ化ナトリウム水溶液による比重分離で除去した。
【結果】狩野川では糸状や球状など様々な形のプラスチック片が確認された。沼津港は他地点よりも丸みを帯びたものが多く、狩野川から流れ着いたと思われるものもあった。加えて、漁場の網から発生したと思われる糸状のプラスチック片も確認された。稲生沢川は他地点と比べて格段にプラスチック片の数が多く、とりわけ繊維状のプラスチック片が見られた。城池親水公園で見つかるプラスチック片は少なかった。
【考察】韮山高校は3年間かけてマイクロプラスチックを研究してきた。これまでの研究で分かっていた「マイクロプラスチックの数は河口に近づくほど多くなる」という法則は、今年度の調査でも狩野川で確認できた。新たに調査対象とした城池親水公園では、見つかるプラスチック片が極端に少なかったが、これは城池親水公園がため池であり、他と違って、生活排水の流れ込む暗渠水路が存在しない、または少ないためだと考えられる。なお、複数の観測地点から著しく発光する微小なサンプルが見られた。私たちはそれを教室内のチョークの粉だと予想した。追加実験としてチョークの粉との比較実験を行った結果、同様の発光を示し、採取用ネットの網の目よりはるかに小さいことから全体の個数には含めないことにした。
この結果を踏まえた上で個数を数えると、生活排水の流れる暗渠水路の流入が多い地点ほど、マイクロプラスチックが多かった。よって、マイクロプラスチックは人間の生活によって排出されていることが分かったチョークの粉等のコンタミネーションに注意すればナイルレッド染色は有用だと考えられる。

下田高校によるマイクロプラスチック調査

【方法】砂の中に含まれるプラスチック片の調査を担当した。試料は狩野川1カ所(沼津市)、沼津らららサンビーチ1カ所(沼津市)、稲生沢川3カ所(下田市)、下田白浜海岸2カ所(下田市)で得た。採取にあたって、海岸では満潮線、河川ではカーブ内側の30 cm四方から深さ1 cm程度の砂を持ち帰った。実験用ふるいで観察に適した直径0.12~0.50の粒子を得て、樹脂用染料で青色に染まった粒子を双眼実体顕微鏡で数えた。

【結果】海岸の砂で調べたところ、下田白浜海岸北では少なく、南では多く(4.8倍)、プラスチック片の量に統計学的に有意な差が見られた。沼津らららサンビーチはこれらよりもさらに少なかった。河川の砂を調べたところ、稲生沢川上流が圧倒的に多く、稲生沢川中下流の4.1~4.4倍、狩野川河口の47倍ものプラスチック片が見られた。

【考察】下田高校は2年間かけてマイクロプラスチックを研究してきた。昨年度の調査で「下田白浜海岸に分布する2 mm以上のプラスチック片は南北で差がない」ということが分かっていたが、今年度の調査では「下田白浜海岸に分布する0.5 mm以下のプラスチック片は南で多く、北で少ない」ということが分かった。小さなプラスチック片は定期的な清掃で取り除けず、海水浴客が多い南側に残っているためだと考えられる。また、稲生沢川では「マイクロプラスチックの数は河口に近づくほど多くなる」という法則が成り立たないことが新たに分かった。プラスチック片の排出源と疑わしい施設があるので、そのすぐ上流と下流の砂でプラスチック片を調べるつもりでいるが、現段階では詳しい場所の紹介は割愛したい。
・展望
高校の設備でできるマイクロプラスチックの検出法を整え、伊豆半島各地を調べれば調べるほど、新しい疑問や気づきが得られた。韮山高校では、さらに協力校を増やして、支流を含めた狩野川全体のマイクロプラスチック分布を解明したいと考えている。また、下田高校では、稲生沢川で見られた大量のプラスチック片の起源を追究するつもりでいる。