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[O08-P54] 非公式緑地に対する市民意識と利用の可能性ー四街道市鷹の台地区を事例とした空き地に関する活用方法と考察
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」でも緑化運動は私たちが積極的に参加できる活動の一つで、健康と福祉、持続可能な都市とコミュニティ、気候変動対策に貢献することができる。本研究では、自分の住んでいる千葉県四街道市鷹の台地区を対象に、非公式緑地に対する市民意識と利用の可能性を明らかにすることを目的とした。この研究に至った背景として,小さい頃に親と一緒に参加していた自治会のボランティアを経験した時,自分の住んでいる鷹の台地区内にたくさんの空き地を目にした。そこでこの空き地をどのように有効活用すればいいか考えたところ,非公式緑地という考えに出会った。非公式緑地とは意図的に計画,管理されていない自然発生的な植生と定義されている。まず非公式緑地の存在の有無を調べるためにフィールドワークを用いて鷹の台地区を調査し,次にアンケートを用いて非公式緑地に対する市民の意識を調べた。なおアンケート調査はコロナ禍よりgoogle formを用いて行い、アンケートのお知らせのみ地区内に配布した。 対象地域のフィールドワーク調査の結果、主に4種類の非公式緑地の存在が確認できた。またアンケート調査の結果,133人の住民からの回答が得られた。アンケート回答者の属性は男女比がほぼ1:1で年齢は10代から70代以上と幅広い年齢層となった。特徴的なアンケート結果の一つとして,アンケート回答者の95%の人が動植物と共存することが大切であると考えていた。フィールドワークで発見した4つの非公式緑地を緑地かどうか尋ねたところ,、空き地のみ賛成の意見が反対の意見よりも多かった。そこで本研究では一番緑地と認識されている空き地に重点を置くことで非公式緑地の可能性を調べることにした。9割の住民は空き地が近くにあると答え、約半数の人が空き地で散歩やスポーツを行ったことがあり、これを活用したいと考えていることがわかった。これらの結果から、空き地は、非公式緑地を補完する可能性があり、また非公式緑地は普段から緑地に触れ合うことで緑地と認識しやすいと言う関係性がある。現在の日本で増えてきている空き地の有効活用例は,千葉県柏市で制定されている『カシ庭制度』が挙げられた。『カシニワ制度』とは2010年から始まった,身近にある空き地を、地域の人々が手を加え、みんなが使える「地域の庭」にすることで、柏の緑を守っていこう・増やしていこうとする取り組みである。しかし『カシニワ制度』のデメリットとして一つ挙げられるのは,やはり土地を貸す側のメリットが少ないことだろう。カシニワ制度では土地保有者のほとんどが無償で土地を貸し出しているからである。そこで本研究では『空き地バンク』の提唱をした。これは空き地を一定期間以上地方自治体に預けることで、その土地で育てた作物の一部を『利子』として受け取ることのできる制度だ。この空き地バンクという制度は[①自治会が土地保有者と契約して土地の契約②自治会及び地域住民での野菜,果物の栽培③生産した農作物を農業直売所などで売る④土地維持管理と共に作物の一部を所有者に還元]という4つのプロセスに分かれている。カシニワ制度と空き地バンクの違いとは、空き地バンクは一種のアグリビジネスであり利益が出ることである。空き地バンクのメリットとしては[①活用していなかった土地を有効活用できる上に返礼品をもらえる、②地域の活動の活性化とともに高齢化社会の中で老若男女が交流することができる。③鷹の台地区の一つのブランド作物ができる。]の3つが挙げられた。またデメリットとして考えられるのは[①天候や虫などによる作物の不作、②野菜の種や苗などの初期費用が割とかかる。]が挙げられた。今回の研究では分析結果より身の回りにある何気ない緑(非公式緑地)が実は地域の人々の気持ちにゆとりをもたらしている効果があることを明らかにした。今後の目標としては空き地バンクの実証を含め市民活動としての活動とその効果を検証していくことで,SDGsの目標11に示された健康で快適に住み続けるまちをつくることに貢献することである。