日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P61~P80

2022年5月29日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

15:30 〜 17:00

[O08-P63] スプライトと雷の電荷モーメントの関係性

*笹岡 大次郎1、小笠原 羽琉1、川渕 日咲野1、國松 李胡1、森本 陽菜1、*中野 裕斗1、*前田 佳杜1 (1.高知県立高知小津高等学校)


キーワード:高高度発光現象、雷

我々は、北陸地方上空で発生する高高度発光現象の一つであるスプライトの観測を校舎五階から日々行っている。高高度発光現象とは、落雷に伴って高度約50km~100kmで発生する発光現象である。高高度発光現象の種類はスプライトやエルブスがあり、私たちは特にスプライトについて研究を行っている。
スプライトは、落雷の中でも正極性落雷に伴って発生するとされているが、正極性落雷でもスプライトを伴うものとそうでないものがあり、その原因がはっきり分かっていない。その原因を明らかにするために、スプライトを伴う正極性落雷は総じて電荷モーメントの値が大きいのではないかと仮説を立てた。検証には計測が難しい電荷モーメントの値に代わり、それに比例する磁束密度の積分値を用いた。
雷は落雷時に電磁波が放出され、伝搬する。特にELF帯は遠方まで伝搬するため、観測に適している。そのELF帯の電磁波の情報を活用し、本研究を行った。電磁波データは中部大学井筒先生よりご提供いただいた。先行研究では、スプライトの発生位置及び親雷の特定を行い、横軸に時間、縦軸に磁束密度をとって電磁波の変化をグラフ化し、一定時間(0.5秒)でグラフを区切って積分値を算出し、その大きさを調べた。その結果、スプライト発生の原因となったと思われる雷が発生している時間帯は磁束密度の積分値が大きくなっていることが分かった。磁束密度の積分値は、電荷モーメントに比例することが分かっているため、この検証によってスプライトが発生している雷は、そうでない雷よりも電荷モーメントが大きいことが推定できた。さらに信頼度を向上させるために、検証する件数を増やすということが先行研究の課題として挙げられたので、私たちは他のイベントのデータの検証も進めた。
先行研究において、0.5秒ごとにグラフを区切っていた磁束密度の積分値を算出していたが、設定した時間が大きかったことや、グラフの変化を中心としてグラフを区切ったことによって、検証した区間同士が時系列上重なってしまうということが起こってしまったので、時間を0.03秒と短く設定して積分値を求めて検証した。その結果、私たちの検証したデータでも、スプライトを伴う正極性落雷の方が、電荷モーメントの値が大きいと分かった。
しかし、専門家の先生から、磁束密度の積分値算出際にグラフを区切る時間を一定にする必要がないことや、区切る区間の中に複数の雷による磁場の変化が含まれてはならないことの指摘をいただいたため、雷をそれぞれ識別するために、観測地点からの磁場の変化の角度によって磁場の変化が同じ雷によるものか確認し、仮説が正しいか確かめた。