日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P61~P80

2022年5月29日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

15:30 〜 17:00

[O08-P73] 立川の段丘崖

*村井 勇介1、後藤 英仁1 (1.東京都立立川高等学校)


この研究では本校周辺の段丘崖についてフィールドワークや標高地形図から調査を行った。

本校周辺の段丘地形は現在では住宅地化が進み、航空写真や地図ではなかなかその地形的な特徴を観察することが難しいため、その様子や地形の変化を詳しく探ることを目的とした。

立川高校は図1のように立川段丘のへりに位置していて、すぐ南に青柳面があり、そのさらに南に現在の多摩川の氾濫原がある。段丘崖は自然の状態で保存されている箇所もあれば開発により形状が変化している箇所もあり、特に青柳面に注目すると面の西端の立川面との境界が曖昧になっていたため、実際にフィールドワークで調査した。また、文献調査からわかった青柳面と立川面の東西方向の傾斜の違いや、青柳面の立川断層による地形のずれが実際にどうなっているのかを調べ分析した。

調査方法として、事前の文献調査をもとにフィールドワークを行った。また、3D地図を作成し、地形の特徴を調べた。

フィールドワークではまず図1中の赤線の範囲を青柳面と予想し、青柳面と立川面、青柳面と多摩川低地の境界について、図2の地図(地理院地図を用いて作成)中の地点A、B、Cについてフィールドワークを行った。その結果、写真1~3のように図2の地図の読み取り結果と合致する傾斜を確認することができた。これにより、特に細くなっていた地点A,B付近も青柳段丘の一部であるということが分かった。



次に本校周辺の段丘地形をわかりやすくするため、地理院地図の3D化機能を用いて図3のように立体地図を作成した。この地図で青柳面西端部に注目すると図4のように段丘崖のほかの部分に比べて境目が不明瞭になっていることが分かった。また、図3中の直線αβにおける断面図(図5)からも西端部がほかの部分に比べて傾斜が急になっていることが分かった。このことから、この周辺に古くから立川城や寺院が所在していたことによる地形の変化も影響していると考えた。

次に、文献調査からわかった、青柳面と立川面の東西方向の傾斜の違いについて調べた。新多摩川誌中に掲載されている図6によると青柳面は立川面に比べて傾斜が急であることがわかる。このことを実際に各面上で東西方向の断面図を作成して確かめた。断面図は図7のA~Dの4本(Dが青柳面上)を設定した。青柳面上については矢川の東西で分けて傾斜を計測した。この結果は図8のようになり、A~Cを平均した立川面の傾斜より、D中の赤丸の2区間を平均した青柳面の傾斜のほうが大きいことがわかり、今回計測した短い区間でも図Xのような変化が確認できた。

次に、図X中の地点X,Yで矢川(写真4)と立川段丘の撓曲面(写真5)の巡検を山崎晴雄氏と行った。矢川の上流が山ではないにも関わらず、河床に石が多いことについて、この石は青柳面と立川面の間から運ばれてきたものであるということがわかった。周辺はかつて畑だったこともあり、湧水を利用して矢川に収束する用水路が多数存在する。立川断層の撓曲面では緩やかに傾斜している断層の様子を見ることができた。

今後の展望としては、青柳段丘面と立川段丘面の間の段丘崖の高さだけでなく、青柳段丘面と多摩川低地の間の段丘崖の高さもグラフ化することで、立川面と青柳面の東西方向の傾斜の違いをよりわかりやすく示したい。また、現在ブラウザ上でのみ閲覧している3D地図を実際に3Dプリンターで印刷し、本校周辺の地形的な特徴をより一層わかりやすく表現したい。