日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG18] 宇宙・惑星探査の将来計画および関連する機器開発の展望

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:坂谷 尚哉(立教大学 理学部 物理学科)、コンビーナ:小川 和律(宇宙航空研究開発機構)、吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、コンビーナ:横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)、座長:坂谷 尚哉(立教大学 理学部 物理学科)、小川 和律(宇宙航空研究開発機構)、吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)

11:00 〜 13:00

[PCG18-P06] 1.8m軸外し望遠鏡PLANETS主鏡の形状計測と研磨

*鍵谷 将人1永田 和也1、平原 靖大2、花村 悠祐2、栗田 光樹夫3坂野井 健1笠羽 康正1 (1.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、2.名古屋大学大学院環境学研究科、3.京都大学理学研究科)

キーワード:形状計測、軸外し放物面

口径1.8 mの軸外し望遠鏡であるPLANETS (Polarized Light from Atmospheres of Nearby Extra-Terrestrial Systems) は、東北大学がハワイ大学他との国際協力のもと開発を進めており、ハワイ・ハレアカラ観測所への設置を最終目標として2022年に国内でファーストライトを迎える予定である。掩蔽物のない低散乱光学系という特徴を生かして、太陽系内惑星や衛星近傍の大気・プラズマ発光といった、輝度の大きな天体近傍の微弱な発光の観測(高ダイナミックレンジ観測)を重要な目標の一つに挙げている。本発表では名古屋大、京都大と共同で開発を進めている主鏡(直径1.85m、重さ510kg、最大厚さ100mmのクリアセラム)の形状計測と研磨状況について報告する。
口径2m程度の自由曲面の研磨加工は、大口径望遠鏡のためのセグメント鏡や大型化する望遠鏡に対応する観測装置にとって重要な技術である。自由曲面を研磨するのに不可欠な高精度の形状計測手段として、従来用いられてきたCGH干渉計やPrecision Optical Deflectometry (POD)等の手法では、鏡の曲率半径(本主鏡の場合8.6m)に相当する高さの頑丈な計測タワーを準備する必要があり、研磨のコストを増大させる要因となっていた。本研究ではこれらの問題点を克服するため、ロボットアームに3点プローブを取り付けた3点引きずり法(Kurita+2016)を形状計測の基盤技術として利用する。3点引きずり法は、1直線に等間隔(10~20mm)に並んだ3つのレーザー距離計(プローブ)により、計測パス上の局所曲率を測定し、これを2階積分することで計測パスに沿った形状誤差を導出する。そしてこの計測を相互に交わる複数の直線パスや閉じた円環パスに沿って実施し、各系列データを弾性体モデルとして扱う独自のデータ接続アルゴリズム(データスティッチング)を利用することで、1mスケールの形状測定精度を20nm以下に抑えた高精度な計測が可能となる。また計測後に3点プローブを研磨スピンドルに持ち変えることで、迅速に研磨加工に移行することができる。本計測・研磨手法は、従来の干渉計等を用いた検査方法に比べて設備投資が低く抑えられ、省力かつ低コストで迅速に計測と修正加工を行うことができる。これは、他の自由曲面形状の研磨にも応用発展可能な技術として意義深い。
本手法により計測された主鏡の鏡面形状誤差は、最終研磨工程前の2021年10月時点でZernike第6項までを除いてRMS誤差0.76μmとなり、過去にITT/ExelisによりPrecision Optical Deflectometry(POD)法で計測された形状誤差と整合する結果を得た。その後約3ヶ月間に8回の修正研磨を経て、2022年初頭の段階でRMS誤差200nm以下を達成している。発表では同一状態の鏡を異なる計測経路で複数回測定した結果を示し、計測の再現性についての議論と最新の研磨状況について紹介する。