16:15 〜 16:30
[PEM10-20] 多地点・単一波長オーロラ画像からの脈動オーロラ3次元構造と降下電子の再構成
キーワード:脈動オーロラ、コンピュータトモグラフィ、電離圏、欧州非干渉散乱レーダー
降下電子のエネルギー・空間分布を調査するは、有効な手段の一つとして、オーロラコーンピュータトモグラフィ (ACT) 法がある。ACT法は逆問題を解くことによって、地上多地点で取得された単一波長のオーロラ画像から、体積放射率の3次元分布や降下電子フラックスの2次元分布を再構成する手法である。これまで、ACT法は脈動オーロラに適用されてきたが、脈動オーロラに適用された報告例はない。これは、脈動オーロラが、コントラストが低くぼんやりとした構造を持っていることに起因する。一方で、近年では多数の高感度カメラのインターネットを用いた遠隔運用や大量のオーロラ画像データを保存できるアーカイブシステムによって、地上多地点で同時に脈動オーロラを高時間分解能かつ高信号雑音比で観測することが可能になった。そこで、本研究では、これらの高感度のカメラを用いて、地上で取得されたオーロラ画像から脈動オーロラの体積放射率の3次元構造や降下電子の2次元分布を初めて再構成し、その結果を評価する
ことを目的とする。
我々は、単一波長のオーロラ画像を取得するために、Skibotn (北緯69.35度、東経20.36度)、Kilpisjarvi (北緯69.05度、東経20.78度)、そしてAbisko (北緯68.36度、東経18.82度)に設置されている全天カメラを使用した。観測波長は427.8 nm、時間分解能は2秒である。2018年2月18日0–2 UTのサブストーム回復相時に、3地点の全天カメラで脈動オーロラが観測された。我々は3地点の全天カメラの視野内の欧州非干渉散乱 (EISCAT)レーダー観測点上で12秒間観測された脈動オーロラパッチに対してACT法を行った。ぼんやりとして暗い脈動オーロラパッチにACT法を適用するために、我々はディスクリートオーロラに適用されてきたACT法に以下の3点の改良を加えた: ACT法を行う前に背景のディフューズオーロラ発光をオーロラ画像から差し引いた点、3地点の全天カメラ間の相対感度を推定した点、そして滑らかさの項の重みを決定した点。
その結果、我々は脈動オーロラの体積放射率の3次元構造と降下電子の水平分布の再構成に初めて成功した。再構成された降下電子フラックスの特性エネルギーは6 keVから23 keV、再構成された体積放射率のピーク高度は90 kmから104 kmの範囲の値を持っていた。これらの結果は先行研究とも整合的な結果となっている。また、我々は脈動オーロラパッチの12秒間の発光の間に、降下電子フラックスの特性エネルギーの水平分布が一様でなく、かつ定常的でないことを発見した。このような時空間変化は電子を磁気圏から電離圏に降下させるホイッスラーモードコーラス波のサイクロトロン共鳴エネルギーの時間変化を示唆する。そのため、観測された脈動オーロラの時空間変動はその発生源である磁気圏の背景磁場やプラズマ環境を理解するのに重要である。このように、我々はロケットや衛星観測では得ることが難しい降下電子の2次元分布や体積放射率の3次元分布を地上からの観測データのみを使用して得ることができた。
また、我々は再構成結果を評価するために脈動オーロラパッチのモデルを作成してその再構成を行った。さらにルンゲ・クッタ法を用いて電子密度の連続の式を解くことで、再構成されたモデルオーロラの体積放射率を電子密度に変換した。そして、変換された電子密度をEISCATレーダーにより観測された電離圏電子密度と比較した結果、十分な精度で電離圏電子密度を再構成できていることを確かめた。
ことを目的とする。
我々は、単一波長のオーロラ画像を取得するために、Skibotn (北緯69.35度、東経20.36度)、Kilpisjarvi (北緯69.05度、東経20.78度)、そしてAbisko (北緯68.36度、東経18.82度)に設置されている全天カメラを使用した。観測波長は427.8 nm、時間分解能は2秒である。2018年2月18日0–2 UTのサブストーム回復相時に、3地点の全天カメラで脈動オーロラが観測された。我々は3地点の全天カメラの視野内の欧州非干渉散乱 (EISCAT)レーダー観測点上で12秒間観測された脈動オーロラパッチに対してACT法を行った。ぼんやりとして暗い脈動オーロラパッチにACT法を適用するために、我々はディスクリートオーロラに適用されてきたACT法に以下の3点の改良を加えた: ACT法を行う前に背景のディフューズオーロラ発光をオーロラ画像から差し引いた点、3地点の全天カメラ間の相対感度を推定した点、そして滑らかさの項の重みを決定した点。
その結果、我々は脈動オーロラの体積放射率の3次元構造と降下電子の水平分布の再構成に初めて成功した。再構成された降下電子フラックスの特性エネルギーは6 keVから23 keV、再構成された体積放射率のピーク高度は90 kmから104 kmの範囲の値を持っていた。これらの結果は先行研究とも整合的な結果となっている。また、我々は脈動オーロラパッチの12秒間の発光の間に、降下電子フラックスの特性エネルギーの水平分布が一様でなく、かつ定常的でないことを発見した。このような時空間変化は電子を磁気圏から電離圏に降下させるホイッスラーモードコーラス波のサイクロトロン共鳴エネルギーの時間変化を示唆する。そのため、観測された脈動オーロラの時空間変動はその発生源である磁気圏の背景磁場やプラズマ環境を理解するのに重要である。このように、我々はロケットや衛星観測では得ることが難しい降下電子の2次元分布や体積放射率の3次元分布を地上からの観測データのみを使用して得ることができた。
また、我々は再構成結果を評価するために脈動オーロラパッチのモデルを作成してその再構成を行った。さらにルンゲ・クッタ法を用いて電子密度の連続の式を解くことで、再構成されたモデルオーロラの体積放射率を電子密度に変換した。そして、変換された電子密度をEISCATレーダーにより観測された電離圏電子密度と比較した結果、十分な精度で電離圏電子密度を再構成できていることを確かめた。