11:00 〜 13:00
[PEM11-P01] 地上高速オーロラ全天イメージャーとFIREBIRD-ⅡCubeSatによる脈動オーロラとマイクロバーストの複数同時観測イベントの解析報告
キーワード:脈動オーロラ、マイクロバースト、キューブサット
本発表では、FIREBIRD-ⅡCubeSat衛星と地上全天イメージャーによる脈動オーロラとマイクロバーストの同時観測イベントを複数例解析した結果について報告する。
脈動オーロラは数秒から数十秒の周期で明滅するディフューズオーロラの一つとして知られており、~5-30 keVの電子降下により生成される。一方、マイクロバーストは~MeV電子の周期的・突発的な降下として観測される。両者は、周期性や発生時間帯などの共通性を示す一方で、降下電子エネルギーが大きく異なる。近年の理論研究から、コーラス波との波動粒子相互作用が、脈動オーロラとマイクロバーストに共通する生成メカニズムであることが提唱されており、両者の関連性の実証は、脈動オーロラがマイクロバーストのような中層大気まで影響を与える高エネルギー電子降下の指標となり得ること示唆するため、大きな意義を持つ。本研究は、脈動オーロラとマイクロバーストに共通する降下電子の対応関係から、その生成過程を明らかにするために、低高度衛星FIREBIRD-II CubeSatによる~200 keVから~MeVまでの高エネルギー粒子計測と、地上EMCCDカメラ観測による、脈動オーロラとマイクロバーストの同時観測データの解析を行った。本発表では、1例の詳細なイベント解析(Case 1)と、5例のイベント解析を行った結果を報告する。
Case1ではFIREBIRD-IIのFU3とPokar Flat Research Range (PFRR) に設置されたEMCCDカメラによる2018年10月8日の同時観測イベントについて解析を行った。2018年10月8日11:50:50 UT 付近に、FU3はPFRRで観測された複数の脈動オーロラパッチ上空を通過した。この際に、脈動オーロラの発光タイミングの開始から7秒遅れて、FU3は~220 keVから~ MeVのマイクロバーストを観測した。同時刻に、脈動オーロラパッチとマイクロバーストが発生した地点の低緯度側にあらせ衛星とVan Allen Probes (Radiation Belt Storm Probes-B: RBSP-B) が位置していた。これらの磁気圏衛星の波動・粒子計測データから、脈動オーロラとマイクロバーストは共にコーラス波動と共鳴した電子により発生したことが示唆された。脈動オーロラとマイクロバーストの発生タイミングのずれについては、コーラス波動の斜め伝搬やコーラス波動の共鳴エネルギーと粒子の空間分布に起因することが推測された。
さらに、Case1とKawamura et al. (2021)での解析イベントを含む、地上EMCCDカメラとFIREBIRD-IIの5例の同時観測イベントの比較を行った。この結果、5つのイベントの脈動オーロラは全て内部変調を伴っていたこと、L値が6.0以下と比較的低緯度でのイベントであったこと、脈動オーロラの形状としてパッチの形がはっきりしていたことが共通していた。また、これらのイベントの磁気活動度が高かったことから、マイクロバーストを伴う脈動オーロラの発生には、磁気嵐に伴う内部磁気圏への高エネルギー電子のインジェクションが必要であると考えられた。これらのイベント解析から、マイクロバーストを伴う脈動オーロラの条件について、以下の2つの条件を導くことができた。(i) 内部磁気圏へのインジェクションにより高エネルギー電子が生成され、磁気圏に脈動オーロラとマイクロバーストの発生源となる電子が存在し、かつ、コーラス波動との共鳴条件を満たすこと。(ii) コーラス波動が磁気高緯度に伝搬すること。この際、コーラス波動の伝搬方向の違いにより電離圏における脈動オーロラとマイクロバーストの発生場所が異なる。
今後の研究では、マイクロバーストを伴う脈動オーロラの条件や特徴の理解を深めるために、粒子・光学同時観測に併せて波動の同時観測イベントを解析することや、高時間分解能での同時観測イベントによる統計解析を行うことが必要である。
脈動オーロラは数秒から数十秒の周期で明滅するディフューズオーロラの一つとして知られており、~5-30 keVの電子降下により生成される。一方、マイクロバーストは~MeV電子の周期的・突発的な降下として観測される。両者は、周期性や発生時間帯などの共通性を示す一方で、降下電子エネルギーが大きく異なる。近年の理論研究から、コーラス波との波動粒子相互作用が、脈動オーロラとマイクロバーストに共通する生成メカニズムであることが提唱されており、両者の関連性の実証は、脈動オーロラがマイクロバーストのような中層大気まで影響を与える高エネルギー電子降下の指標となり得ること示唆するため、大きな意義を持つ。本研究は、脈動オーロラとマイクロバーストに共通する降下電子の対応関係から、その生成過程を明らかにするために、低高度衛星FIREBIRD-II CubeSatによる~200 keVから~MeVまでの高エネルギー粒子計測と、地上EMCCDカメラ観測による、脈動オーロラとマイクロバーストの同時観測データの解析を行った。本発表では、1例の詳細なイベント解析(Case 1)と、5例のイベント解析を行った結果を報告する。
Case1ではFIREBIRD-IIのFU3とPokar Flat Research Range (PFRR) に設置されたEMCCDカメラによる2018年10月8日の同時観測イベントについて解析を行った。2018年10月8日11:50:50 UT 付近に、FU3はPFRRで観測された複数の脈動オーロラパッチ上空を通過した。この際に、脈動オーロラの発光タイミングの開始から7秒遅れて、FU3は~220 keVから~ MeVのマイクロバーストを観測した。同時刻に、脈動オーロラパッチとマイクロバーストが発生した地点の低緯度側にあらせ衛星とVan Allen Probes (Radiation Belt Storm Probes-B: RBSP-B) が位置していた。これらの磁気圏衛星の波動・粒子計測データから、脈動オーロラとマイクロバーストは共にコーラス波動と共鳴した電子により発生したことが示唆された。脈動オーロラとマイクロバーストの発生タイミングのずれについては、コーラス波動の斜め伝搬やコーラス波動の共鳴エネルギーと粒子の空間分布に起因することが推測された。
さらに、Case1とKawamura et al. (2021)での解析イベントを含む、地上EMCCDカメラとFIREBIRD-IIの5例の同時観測イベントの比較を行った。この結果、5つのイベントの脈動オーロラは全て内部変調を伴っていたこと、L値が6.0以下と比較的低緯度でのイベントであったこと、脈動オーロラの形状としてパッチの形がはっきりしていたことが共通していた。また、これらのイベントの磁気活動度が高かったことから、マイクロバーストを伴う脈動オーロラの発生には、磁気嵐に伴う内部磁気圏への高エネルギー電子のインジェクションが必要であると考えられた。これらのイベント解析から、マイクロバーストを伴う脈動オーロラの条件について、以下の2つの条件を導くことができた。(i) 内部磁気圏へのインジェクションにより高エネルギー電子が生成され、磁気圏に脈動オーロラとマイクロバーストの発生源となる電子が存在し、かつ、コーラス波動との共鳴条件を満たすこと。(ii) コーラス波動が磁気高緯度に伝搬すること。この際、コーラス波動の伝搬方向の違いにより電離圏における脈動オーロラとマイクロバーストの発生場所が異なる。
今後の研究では、マイクロバーストを伴う脈動オーロラの条件や特徴の理解を深めるために、粒子・光学同時観測に併せて波動の同時観測イベントを解析することや、高時間分解能での同時観測イベントによる統計解析を行うことが必要である。