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[PEM13-P04] ダーウィンで得られた大気光画像の3次元スペクトル解析に基づく中間圏・熱圏波動の水平位相速度分布の統計解析:佐多の初期解析との比較
キーワード:大気重力波、中規模伝搬性電離圏擾乱、大気光画像、統計解析
超高層大気中を伝搬する大気重力波や中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)は、大気の大循環や短波通信に影響を与える。これらの波動現象は地上から大気光イメージャで撮像観測され、そのスペクトル解析から、これらの波動の伝搬方向やパワーを見積もることができる。しかし、南極を除けば南半球の観測点でこのような大気光画像のスペクトル解析はこれまで行われていなかった。本研究では南半球のオーストラリアのダーウィン観測点(12.4°S, 131.0°E)で得られた大気光画像にMatsuda et al. [2014]の3次元スペクトル解析手法を適用し、 2001年から 2007 年および2011年から2019年の大気重力波とMSTIDの統計解析を行った。
その結果、波長557.7 nmの大気光画像に見られる中間圏大気重力波の水平位相速度スペクトルの解析から、夏やラニーニャ現象期間において北西方向に伝搬する波動のスペクトルが特徴的に小さくなっていることがわかった。このときの対流圏の鉛直流を調べると、特にダーウィンの南東で上昇流が見られなかった。このことから、対流圏の鉛直流が大気重力波の波源となり、鉛直流とダーウィンの相対位置によって、中間圏大気重力波のスペクトルの方向依存性が左右されている可能性が考えられる。
波長630.0 nmの大気光画像に見られるMSTIDの水平位相速度スペクトルの解析から、冬や太陽活動が静穏な期間において、北西方向に伝搬するMSTIDのスペクトル強度が増大していることがわかった。北西方向のスペクトルの増大や太陽活動度依存性については、MSTIDが電離圏のパーキンス不安定で生成されると考えると説明できる。また、水平位相速度スペクトルには、北西方向以外に伝搬するMSTIDも観測されており、これらについては、大気重力波によってMSTIDが生成されている可能性が考えられる。
本研究ではさらに、これまで解析を行ってきたダーウィン観測点に加えて、鹿児島県の佐多観測点(31.0°N, 130.7°E)のデータを使用した解析も行った。ダーウィンと佐多は磁気的には互いに磁気共役点に近く、地理的には南半球の低緯度(12.4°S)と北半球の中緯度(31.0°N)に位置しており、気候や周囲の地形的状況が大きく異なる。発表では、佐多の2000年から2020年までの使用可能な観測データに基づく初期解析結果をダーウィンの結果と比較し、地理的特性や磁気的特性によるスペクトルの違いを考察する。
その結果、波長557.7 nmの大気光画像に見られる中間圏大気重力波の水平位相速度スペクトルの解析から、夏やラニーニャ現象期間において北西方向に伝搬する波動のスペクトルが特徴的に小さくなっていることがわかった。このときの対流圏の鉛直流を調べると、特にダーウィンの南東で上昇流が見られなかった。このことから、対流圏の鉛直流が大気重力波の波源となり、鉛直流とダーウィンの相対位置によって、中間圏大気重力波のスペクトルの方向依存性が左右されている可能性が考えられる。
波長630.0 nmの大気光画像に見られるMSTIDの水平位相速度スペクトルの解析から、冬や太陽活動が静穏な期間において、北西方向に伝搬するMSTIDのスペクトル強度が増大していることがわかった。北西方向のスペクトルの増大や太陽活動度依存性については、MSTIDが電離圏のパーキンス不安定で生成されると考えると説明できる。また、水平位相速度スペクトルには、北西方向以外に伝搬するMSTIDも観測されており、これらについては、大気重力波によってMSTIDが生成されている可能性が考えられる。
本研究ではさらに、これまで解析を行ってきたダーウィン観測点に加えて、鹿児島県の佐多観測点(31.0°N, 130.7°E)のデータを使用した解析も行った。ダーウィンと佐多は磁気的には互いに磁気共役点に近く、地理的には南半球の低緯度(12.4°S)と北半球の中緯度(31.0°N)に位置しており、気候や周囲の地形的状況が大きく異なる。発表では、佐多の2000年から2020年までの使用可能な観測データに基づく初期解析結果をダーウィンの結果と比較し、地理的特性や磁気的特性によるスペクトルの違いを考察する。