日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:Huixin Liu(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、コンビーナ:Deng Yue(University of Texas at Arlington)、座長:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、新堀 淳樹(名古屋大学宇宙地球環境研究所)


11:00 〜 13:00

[PEM13-P16] 短波ドップラー観測に高度計測機能を追加するための新観測システムの検討

*並木 紀子1細川 敬祐1野崎 憲朗坂井 純1冨澤 一郎1、有澤 豊志1 (1.電気通信大学大学院情報理工学研究科)

キーワード:HFドップラー、電離圏擾乱、周波数変調連続波、電波高度計、JG2XA

短波ドップラー(HF Doppler: HFD)法を用いた電離層擾乱の観測は、1960年代から様々な緯度帯において継続的に行われてきた。日本においても、過去50年ほどにわたって観測が継続され、電離圏[1] E、F領域からの反射波に印可されたドップラーシフトを用いて、伝搬性電離圏擾乱やスポラディックE現象、磁気圏もしくは下層大気からのエネルギー流入に伴う変動の研究が行われてきている。電気通信大学では、1977年から短波標準電波JJY(通信総合研究所)を利用したHFD観測を開始し、反射波を国内の複数点で受信することによる稠密多点観測を実施してきた。短波JJYが廃止された後、2001年からは、HFDによる電離圏研究の継続のために、従来使用していた周波数に近い5006 kHzと8006 kHzの電波の送信を行う実験局JG2XAを設置し、送受信局の運用を続けている。
JG2XA実験局の設置から20年ほど経過して、設備の老朽化もさることながら送受信機を構成する装置類の一般的性能が向上したこともあり、装置の更新に合わせて電波送信形式を見直し、高度計測機能を追加することを検討している。特に、測距機能により従来は区別できなかったE、Fの電離圏反射領域を識別し、多点観測データから立体的な反射領域における電子密度の構造変化を観測することを想定している。観測機能拡張の要件としては、(1)従来の観測データとの整合がとれること、(2)従来は、データから推測していた反射高度を測定できるようにすること、(3)国内無線局の基準を満たして認可をとること、の3つが挙げられる。これらの要件を満たすために、今まで使用してきた5006 kHzと8006 kHzの連続波(Continuous Wave:CW)の送信は継続しつつ、新たに周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave:FM-CW)を加えた形で送受信システムの機能更新を行うことを検討している。なお、受信システムについては、既にソフトウェア受信機によるデジタル受信が完成しており、観測システムの変更に柔軟に対応できるようになっている。
CWはドップラー周波数の変動を観測するのに適した最も単純な電波形式である。現在は、二つの周波数それぞれに対し、中心周波数から1.5 kHz帯域幅での送信が許可されており、コールサインをSSB変調で送信して局の識別信号とする形で送信している。反射高度を測定するために新たにFM-CWの送信を行う場合、サイエンス面で要求される1 kmの距離分解能を得るためには、150 kHzの帯域幅が必要となる。現状では、150 kHzの帯域にわたって1秒間に20回の周波数掃引を行うことを前提に検討を行っている。送信と受信との間で周波数掃引の開始タイミングをGPSに同期した1pps信号に合わせることで、伝搬距離に比例した受信信号と送信信号の周波数差[2] により伝搬遅延を検出し、反射高度を導出することを予定している。発表では、現在検討を行っている電波形式、および開発中の送信システムの構成について、その詳細を述べる。