日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:Huixin Liu(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、コンビーナ:Deng Yue(University of Texas at Arlington)、座長:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、新堀 淳樹(名古屋大学宇宙地球環境研究所)


11:00 〜 13:00

[PEM13-P17] 昭和基地OH大気光分光計で検出された増光イベントの時間スケールと背景大気場変動の関係

*石井 智士1鈴木 秀彦1堤 雅基2,3田口 真4江尻 省2,3西山 尚典2,3門倉 昭5,2,3 (1.明治大学、2.国立極地研究所、3.総研大、4.立教大学、5.データサイエンス共同利用基盤施設)


キーワード:OH大気光、オーロラ、中間圏界面、下部熱圏

第49次南極地域観測隊で南極昭和基地に設置されたOH大気光分光計はOH (8-4)バンドの観測により、直接観測が困難である極域上部中間圏領域の大気状態を2008年2月末より監視している。大気光の地上光学観測は主に対流圏で発生する雲により妨げられるため、観測データには大気光の変動以外にも雲による掩蔽の影響が含まれている。したがって、観測当時の詳細な天候状況は大気光観測データ品質を客観的に評価する上で重要である。そこで、本研究では昭和基地に併設されているオーロラモニタリング用のカラーデジタルカメラの夜間における画像データを解析し、観測視野(高度角、方位角)、時間、観測点位置の情報から画像中での星の位置を推定し、実際に観測で得られた画像中にその星が検出されたかどうかを自動で判定することで当時の詳細な気象条件を推定した。この天候判定結果に基づき晴天の時間帯に取得されたOH分光データのみを選別の上解析し、2008年2月から2019年10月までの約12年間分のOH大気光強度の変動を調査した。特に本発表では12年間の観測で複数例検出された数十分~数時間程度で生じる比較的短い時間スケールの正弦波的ではないOH大気光の増光イベント、つまり大気重力波などの大気波動による正弦波的変動ではないイベントと、数日間持続する比較的長い時間スケールの増光イベントに着目した。これらの増光イベントは、高エネルギー粒子の降込みにともなう極域上部中間圏の大気組成変動や豊富な酸素原子濃度を有する空気塊の鉛直輸送といった時間スケールの異なる背景大気場の変動により生じると考えられる。本研究では、昭和基地で実施されている銀河雑音吸収(CNA)観測データから高エネルギー粒子降込みイベントを抽出した。また、一酸化炭素濃度の時間-高度変化は中層大気の鉛直流の強化の指標となるため、Aura衛星搭載のマイクロ波リムサウンダ(MLS)で観測された一酸化炭素濃度の時間-高度変化から中間圏領域において鉛直流が強化された時期を推定し、OH大気光強度の変動と比較した。本発表ではOH大気光の増光イベントの発生時期、頻度と高エネルギー粒子降込みや鉛直流強化に伴って生じると考えられる上部中間圏領域の酸素濃度変動の関係について議論する。