日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] Frontiers in solar physics

2022年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:横山 央明(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:今田 晋亮(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、鳥海 森(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、コンビーナ:Sterling Alphonse(NASA/MSFC)、座長:今田 晋亮(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

11:44 〜 11:59

[PEM14-09] 太陽活動領域11283に関する長期間のデータ駆動型MHDシミュレーション

*康 永玟1金子 岳史1草野 完也1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所)


キーワード:太陽、太陽フレア

太陽では様々な爆発現象が起きている。その中でも太陽フレアという現象は太陽コロナ磁場に蓄積されている磁気エネルギーが解放されることによって引き起こされ、惑星間空間まで高エネルギー粒子を放出するコロナ質量放出(coronal mass ejection; CME)という現象を伴うこともある。太陽フレアは太陽活動領域(solar active region; AR)、いわゆる黒点とも呼ばれている太陽表面で強い磁場が存在している場所で起きている。特に、活動領域の上空に存在するコロナ磁場がその源であると知られている。また、磁気リコネクションとMHD不安定性はフレア発生において重要な過程だと知られている。このように、太陽フレアを研究するためには3次元のコロナ磁場の情報が必要である。しかし、コロナ磁場は直接に観測することが難しくなっているため、実際の太陽フレアの物理機構は未だに明確に理解されていない。すなわち、太陽フレアの物理機構を理解するのは太陽物理学において重要な課題の一つになっている。そのため、現在観測できる2次元の太陽表面磁場を使って3次元のコロナ磁場を計算し、解析する様々な手法が開発されている。本研究ではデータ駆動型の磁気流体力学(MHD)シミュレーションという手法を使い、太陽活動領域11283 (AR 11283)の磁場変動とM5.3クラスフレア発生の関係を調べることを目的とする。シミュレーション手法としては、基本的にKaneko et al. (2021)に紹介されている手法を応用して使う。このデータ駆動型MHDシミュレーションでは、入力データ(下部境界条件)として時系列の太陽表面磁場データ(SDO/HMI)を使い、コロナ磁場の時間発展を計算することができる。また、実際の観測データが次々と導入されているので、より現実的なコロナ磁場を再現できると期待されている。シミュレーション期間はM5.3クラスフレアの発生(2011年9月6日01:59 UT)を含む2011年9月4日19:48 UTから2011年9月6日 06:48 UTまでで、入力データの時間間隔は1時間である。その結果、MHD不安定性の成長が再現され、この成長に伴って運動エネルギーの変化率が変わることになった。さらに、シミュレーションの中で実際のM5.3クラスフレアのピークタイムとシミュレーション中のプラズマの運動エネルギーのピークタイムがほぼ一致していた。また、SDO/AIA 1600 Åで観測されたフレアリボンとシミュレーションでのツイスト数の大きな磁力線の足の位置がかなり一致していることがわかった。