日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] 太陽圏・惑星間空間

2022年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:坪内 健(電気通信大学)、座長:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、坪内 健(電気通信大学)

15:45 〜 16:00

[PEM15-02] 惑星間空間シンチレーション指数と宇宙天気の関係

*徳丸 宗利1藤木 謙一1岩井 一正1、永井 美帆1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:太陽風、惑星間空間シンチレーション、宇宙天気

見かけの大きさの小さな天体電波源に対して観測される惑星間空間シンチーレション(IPS)は、太陽風中の密度ゆらぎ(ΔNe)よって生じる天体電波源のまたたき現象である。IPSの強度は視線に沿ったΔNeの重み付き積分量であり、視線と太陽との距離や太陽風の構造によって複雑に変化する。また、IPS強度は電波源の見かけの大きさにも依存するため、異なる電波源のIPS強度を簡単に比べることはできない。そこで用いられるのがg値(Gapper et al., 1982)である。g値は、電波源毎にIPS強度の太陽離角依存性をモデル化し、それを使って観測されたIPS強度を規格化したものである。即ち、静穏な太陽風の場合、g値は1であるが、視線が高(低)いΔNeの領域を通過した場合、g>1(g<1)となる。電波源の見かけの大きさの効果はモデルに含まれるため、g値を使うと異なる電波源のデータを組み合わせて使用することが可能になる。そして、1日に数多くの電波源についてg値を求めれば、ΔNeの天空投影図(g-map)を作成することができる。名大ISEEでは観測周波数327MHzでのIPS観測から毎日g値データを取得している。これまでにISEEのg値データを使った解析からCMEに伴う太陽風擾乱の3次元構造や伝搬特性が明らかにされている(e.g. Tokumaru et al., 2000, 2003, 2005, 2007; Iju et al., 2013, 2014)。
g-mapは1AU以内の太陽風の状態を一望するのに便利であるが、太陽風の構造を反映して多くの情報が含まれていて、専門家以外には解釈が難しい。そこで本研究ではISEEのg値データから日毎に指数を求め、その指数と宇宙天気との関連を調査した。g値データの指数化は、CambridgeでのIPS観測(観測周波数81MHz)を用いて既に行われている(Harrison et al., 1992; Hapgood & Harrison, 1994; Lucek et al., 1995, 1996a, 1996b)。彼らの研究において、I35, Ihi, Gaveなどの指数が提案され、地磁気データと比較された。その結果、それらの指数は宇宙天気の予報にある程度有効であることが示されたが、観測周波数が低いため電離層の影響を強く受けていた。我々の観測周波数はCambridgeより高いため電離層の影響を受けにくく、IPS指数と宇宙天気の関係をより明瞭にすることが期待される。本研究では、1997年から2019年までの期間に取得したISEE g値データからI35, Ihi, Gaveを求め、それらを地球付近の太陽風速度、密度、およびDst指数と比較した。ここで、IPS指数と比較するため太陽風および地磁気データから1日平均値を求めた。また、1997~2009年(主にサイクル23)は木曽アンテナを使って、2008-2019年は豊川アンテナを使ってg値データを取得した。
その結果、太陽風密度とIPS指数の間には時間差が0日の時に正相関のピークが見られた。また太陽風速度のIPS指数の間には+1日以降に正の相関が数日続くことがわかった。この傾向は、サイクル23と24で同様であった。この結果は、IPS指数の増加が高速風・低速風の境界に生じる圧縮領域の地球到来に対応していることを示唆している。一方、DstとIPS指数の間では、サイクル23において+1日以降で負の相関が継続する傾向が見られたが、サイクル24ではあまり見られなかった。Dstの発達にはIMFが重要な役目をしているのでIPS指数との相関が悪くても当然のことと考えられる。