日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] 太陽圏・惑星間空間

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:坪内 健(電気通信大学)、座長:成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

11:00 〜 13:00

[PEM15-P03] 太陽光球面磁場分布が惑星間空間磁場推定に与える影響

*吉田 南1,2清水 敏文2鳥海 森2 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)


キーワード:光球磁場、惑星間空間磁場

太陽表面から太陽圏へと延びる磁場の振る舞いを理解することは、太陽活動が太陽圏や惑星間空間へ与える影響を見積もるために重要である。太陽の光球から延びる磁場には、「開いた磁場(オープンフラックス)」と「閉じた磁場」が存在する。オープンフラックスは、主にコロナホールから惑星間空間へと広がることで惑星間空間磁場となる。また、観測的に得られた光球面磁場のマップをコロナ磁場モデルに適用することで、オープンフラックスの量を見積もることができる。しかし、コロナ磁場モデルから外挿される地球付近での磁場強度は、その場観測から得られる動径方向磁場強度Br 1AUのデータと比較すると、2-4分の1程度に過小評価されることが知られている(Linker et al., 2017, Wallace et al., 2019; オープンフラックス問題)。この問題の原因として、モデルに使用される光球磁場の極域観測が不十分で、磁束量が過小評価されていることが考えられている(Riley et al., 2019, Tsuneta et al., 2008)。
そこで本研究では、オープンフラックスの推定値の改善にあたって、観測的に見積もられる(光球磁場マップの)磁束量が不十分であることがオープンフラックス問題の原因である可能性について、太陽活動周期の各フェーズに分けて検討した。コロナ磁場モデルには、もっとも単純で、光球磁場の影響を考えやすいPotential Field Source Surface (PFSS)モデルを用いた。下部境界には、SDO衛星に搭載されているHMIの光球磁場マップを用い、また、全ての磁場が動径方向を向いていることを仮定する上部境界(source surface )を2.5太陽半径に設定した。動径方向磁場強度が地球からの距離の2乗に反比例することを利用し、太陽から1 AU地点では緯度依存性がないことを仮定 (Smith et al., 1995)することで、オープンフラックス|Br 1AU|を2010年から約11年間分算出した。その結果、PFSSモデルから推定した|Br 1AU|の値は、その場観測の値に対して、極小期では平均24%程度に、極大期では平均29%程度に、全期間では平均26%程度に過小評価されていた。また、光球の極域磁場を人為的に2倍に強めた場合においても、推定される|Br 1AU|は、30%程度に過小評価されていた。Source surface面での磁場分布を見ると、主に極域の磁場で構成される双極子磁場構造を持つ極小期と、中低緯度に活動領域の多い極大期では、太陽表面の磁場分布と同様に大きく異なっていた。以上より、活動周期にわたって磁場構造や極域の磁束量が変動しても、|Br 1AU|の推定値の平均は5%程度しか変化がないこと、光球の極域磁場を実験的に増加させても、極小期の|Br 1AU|は数%、極大期ではほとんど増加しないことがわかった。したがって、光球磁場の観測が不十分であることは、オープンフラックス問題に対して、極大期では原因とはいえず、極小期でも影響は小さく、主要因ではないと考えられる。