日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS01] Outer Solar System Exploration Today, and Tomorrow

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (3) (Ch.03)

コンビーナ:木村 淳(大阪大学)、コンビーナ:土屋 史紀(東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)、Sayanagi Kunio M.(Hampton University)、コンビーナ:Young Cindy(NASA Langley Research Center)、座長:木村 淳(大阪大学)、土屋 史紀(東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)


11:00 〜 13:00

[PPS01-P05] 塩化ナトリウムへのプラズマ照射実験によるエウロパの希薄大気生成過程と表層組成の解明

*星野 亮1木村 智樹1大槻 美沙子1北野 智大1仲内 悠祐2土屋 史紀3 (1.東京理科大学、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所、3.東北大学理学研究科 惑星プラズマ大気研究センター)


キーワード:エウロパ、宇宙風化、内部海、氷衛星、希薄大気

木星の氷衛星であるエウロパは、内部海を持つことからハビタビリティーが示唆されている天体の1つである。
その内部海と表層の間では水や塩などの物質の輸送が行われている可能性があり、エウロパ表層の物質組成等の理解は内部海環境の理解につながる。
エウロパでは、宇宙空間からのプラズマや紫外線などが表層物質に照射され、宇宙風化が起こる。木星氷衛星で宇宙風化の主要因とされるプラズマは表層でスパッタリングを引き起こし、それにより弾き出された粒子はエウロパの希薄大気を生成し、表層物質は組成が変化すると考えられる。
しかし、その一連の生成過程は物理・化学的に複雑で、プラズマスパッタリングによる希薄大気生成と表層風化伴う組成の変化について、定量的な関連付けは未だなされていない。
本研究では、エウロパ表層候補物質であるNaClにO2+と電子(10 keV, 5×1018 particles/cm2)を照射し、初めてイオンと電子の両者によるスパッタリングと表層物質の組成変化を再現した。
その結果、イオンに比べ電子の方がスペクトルの変化やスパッタリングyieldが大きく、風化させやすいことがわかった(26 /electron, 0.9 /ion)。また、Cl,Cl2などの揮発性物質の方がNaよりもyieldが大きいことがわかった。このことから、エウロパではNaの方がClに比べ地表に残りやすいと言える。
今回の結果から、エウロパ上のNaClの存在が示唆される領域では、電子が多く当たる領域の方が風化が早く進み、希薄大気生成により寄与していると考えられる。また、その領域ではNaの存在率が周囲に比べて高いことが示唆される。
今後は、探査機や望遠鏡による表層のスペクトル観測と実験結果を比較することで、実験結果を検証し、表層年代や表層候補物質の推定をねらう。また、NaClだけでなく、他のさまざまな候補物質にも同様の調査を行い、表層・内部海の組成の統一的解明を目指す。