11:00 〜 13:00
[SCG48-P09] チリ沖海嶺沈み込み帯での長期海底地震アレイ観測
キーワード:チリ沖、海嶺沈み込み、三重会合点、海底地震観測
チリ南部のタイタオ半島沖は、現在アクティブな海嶺が沈み込んでいる地球上で唯一の場である(添付図)。高温の海嶺沈み込みに伴う地殻•地震活動の変化や沈み込みに伴う異常熱の影響を受けた地下構造を調べるために、我々はこれまでにタイタオ半島沖三重会合点地域において二回の海底地震観測を実施した。2009年から2010年にかけて約1年間実施した1度目の観測では、5台の長期海底地震計(LTOBS)を約30km間隔で設置した。この観測により、海嶺軸に沿った非火山性微動が確認されたほか(Saez et al. 2019)海嶺軸近傍とDarwin fault zone沿いで規模の小さい地震活動が活発であることが明らかとなった(篠原•ほか2010)。しかし観測点数が少なく観測点間の距離も長かったため、震源深さの決定精度が十分ではなかった。海嶺沈み込みのテクトニクスを議論するためには、地殻•地震活動の深さ分布をより詳しく知る必要がある。そこで我々は、2019年から2021年にかけて2度目の観測を実施した。本公演では、その海底地震観測の概要と初期解析の一環として得られた地震活動の様子について発表する。
2度目の観測では、8台の広帯域海底地震計(BBOBS)と5台のLTOBSの合計13台の海底地震計(OBS)を使用した。それぞれで使用するセンサーはCMG-3T(360秒、Guralp社製)とLE-3DLite(1Hz、Lennartz社製)である。BBOBSのうち2台には微差圧計も取り付けた(BBOBSP)。BBOBSを使用することで、非火山性微動や低周波地震をはじめとする周期の長い地殻活動の実態を知ることができ、また、広範囲かつ深部の地震学的構造を得られると期待される。設置は2019年1月17日から20日にかけて海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」MR18-06Leg2航海で行なった(添付図)。観測点間隔を約10kmとし、観測期間は約2年間と設定した。回収は2021年1月25日から31日にかけて、チリ海軍のGeneral service patrol boat ”Cirujano Videla”で行った。13台全てのOBSの音響切り離しに成功したが、BBOBS1台については荒天のため回収時に船体と衝突し機器を亡失した。回収した12台OBS は現地で陸揚げし内部のデータ(SDカード)を取り出した。データを取り出した後の機材は2021年12月に日本に到着、約1年経過した2022年1月に東大地震研究所へ帰還した。
12台のOBSは全て2年間連続動作していた。得たデータについてノイズスペクトルを計算し、過去の観測と同等の品質であることを確認している。2台のLTOBSで後半一年間にセンサーのトラブルが発生したが、大きな問題にはつながらなかった。また3台のBBOBSでは、SDカードでのデータエラーが発生し、数時間分のデータ復旧が必要となったが、数ヶ月の時間をかけてほぼ復活することができた。現在は初期解析として、観測網周辺の近地地震の検出、実体波走時の読み取り、震源決定を行っている。対象地域では、グローバルな地震観測網で検出される地震は過去10年間に数十個程度であるが、本観測データによって、規模の小さい地震は観測中の2年間に2000個以上発生していることが確認された。特に震源深さに着目すると、ある緯度(南緯46.4度、熱い海嶺が沈み込む場所)を境にして系統的に異なることが明らかとなった。今後メカニズム解の推定をすることで、海嶺沈み込みに伴う地震活動の変化を詳しく調べていく。
参考文献:
Saez Miguel, Sergio Ruiz, Satoshi Ide, Hiroko Sugioka, Triple Junction: Seismic Evidence of the Subduction of the Active Nazca-Antarctic Spreading Center, Seismological Research Letters, doi: 10.1785/0220180394, 2019.
篠原雅尚、山田知朗、杉岡裕子、伊藤亜妃、Matthew Miller、一瀬建日、Klaus Bataille、岩森光、長期観測型海底地震計を用いたチリ三重会合点付近における地震観測、日本地球化学会、2010.
2度目の観測では、8台の広帯域海底地震計(BBOBS)と5台のLTOBSの合計13台の海底地震計(OBS)を使用した。それぞれで使用するセンサーはCMG-3T(360秒、Guralp社製)とLE-3DLite(1Hz、Lennartz社製)である。BBOBSのうち2台には微差圧計も取り付けた(BBOBSP)。BBOBSを使用することで、非火山性微動や低周波地震をはじめとする周期の長い地殻活動の実態を知ることができ、また、広範囲かつ深部の地震学的構造を得られると期待される。設置は2019年1月17日から20日にかけて海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」MR18-06Leg2航海で行なった(添付図)。観測点間隔を約10kmとし、観測期間は約2年間と設定した。回収は2021年1月25日から31日にかけて、チリ海軍のGeneral service patrol boat ”Cirujano Videla”で行った。13台全てのOBSの音響切り離しに成功したが、BBOBS1台については荒天のため回収時に船体と衝突し機器を亡失した。回収した12台OBS は現地で陸揚げし内部のデータ(SDカード)を取り出した。データを取り出した後の機材は2021年12月に日本に到着、約1年経過した2022年1月に東大地震研究所へ帰還した。
12台のOBSは全て2年間連続動作していた。得たデータについてノイズスペクトルを計算し、過去の観測と同等の品質であることを確認している。2台のLTOBSで後半一年間にセンサーのトラブルが発生したが、大きな問題にはつながらなかった。また3台のBBOBSでは、SDカードでのデータエラーが発生し、数時間分のデータ復旧が必要となったが、数ヶ月の時間をかけてほぼ復活することができた。現在は初期解析として、観測網周辺の近地地震の検出、実体波走時の読み取り、震源決定を行っている。対象地域では、グローバルな地震観測網で検出される地震は過去10年間に数十個程度であるが、本観測データによって、規模の小さい地震は観測中の2年間に2000個以上発生していることが確認された。特に震源深さに着目すると、ある緯度(南緯46.4度、熱い海嶺が沈み込む場所)を境にして系統的に異なることが明らかとなった。今後メカニズム解の推定をすることで、海嶺沈み込みに伴う地震活動の変化を詳しく調べていく。
参考文献:
Saez Miguel, Sergio Ruiz, Satoshi Ide, Hiroko Sugioka, Triple Junction: Seismic Evidence of the Subduction of the Active Nazca-Antarctic Spreading Center, Seismological Research Letters, doi: 10.1785/0220180394, 2019.
篠原雅尚、山田知朗、杉岡裕子、伊藤亜妃、Matthew Miller、一瀬建日、Klaus Bataille、岩森光、長期観測型海底地震計を用いたチリ三重会合点付近における地震観測、日本地球化学会、2010.