日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG50] 島弧の構造・進化・変形とプレート沈み込み作用

2022年5月26日(木) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、コンビーナ:篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)、コンビーナ:石山 達也(東京大学地震研究所)、座長:松原 誠(防災科学技術研究所)、篠原 雅尚(東京大学地震研究所)

15:45 〜 16:00

[SCG50-08] 2011年東北沖地震前後の東北地方の震源断層への応力蓄積

*橋間 昭徳1佐藤 比呂志2石山 達也2松原 誠3 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学地震研究所、3.防災科学技術研究所)

キーワード:応力蓄積、東北日本弧、震源断層、有限要素法、地殻変動

東北地方では1800年代後半から東西圧縮に伴う逆断層型地震が多く起きている。特に、2000年以降、2003年宮城地震、2004年中越地震、2007年中越沖地震、2008年岩手宮城地震というように内陸の被害地震が続いた。このような逆断層型地震は2011年東北沖地震を境に活動度が低下している。近年の地球物理探査からは、東北地方における震源断層の深部形状が推定されている。これらの内陸断層においてどのような応力が蓄積されているのかを見積もることは地震活動予測の上で重要である。本研究では、2011年東北沖地震がこれらの断層にどのような影響を与えているのかを3次元有限要素法により見積もる。
著者らは過去の研究で日本列島域の三次元有限要素モデル(FEM)を構築した。モデルはユーラシア、太平洋、フィリピン海プレートからなり、プレート境界形状は地震分布にもとづく既存研究により定めた。プレート境界面の80 km以浅を約800の小断層面に分割し、各断層面のすべり応答を計算した。また、長期間のプレート境界プロセスを扱うためにアセノスフェアの粘弾性を取り入れている。このモデルを用いて、測地データのインバージョンにより、地震前のプレート境界面におけるすべり欠損分布(プレート間固着)を求め、プレート間固着によって震源断層に蓄積されるクーロン応力を求める。それに2011年東北沖地震による応力変化を重ね合わせて、東北地方の震源断層における応力の時間変化を見積もる。
東北地方の震源断層では2011年東北沖地震以前はクーロン応力が正であったが、東北沖地震以降負となり、地震発生を抑制する応力が働いている。このことは2011年東北沖地震による地震活動変化と調和的である。しかし、東北地方北部の震源断層には、千島海溝の固着の影響により地震発生に調和的な応力が働く。このように、プレート境界過程を正確にモデル化して断層面上の応力を計算し、地震活動によって検証することは、内陸地震発生のメカニズム解明に有益である。