日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG50] 島弧の構造・進化・変形とプレート沈み込み作用

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (25) (Ch.25)

コンビーナ:石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、コンビーナ:篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)、コンビーナ:石山 達也(東京大学地震研究所)、座長:石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、石山 達也(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)、篠原 雅尚(東京大学地震研究所)

11:00 〜 13:00

[SCG50-P03] 九州下におけるホットプルームがフィリピン海スラブの屈曲に及ぼす影響

*香西 夏葵1末永 伸明2,1吉岡 祥一2,1 (1.神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻、2.神戸大学 都市安全研究センタ―)


キーワード:フィリピン海スラブ、ホットプルーム、九州、数値シミュレーション

1.はじめに
九州下に沈み込んでいるフィリピン海プレートは、深さ70km辺りで、急激にその沈み込み角が高角になっている(例えば、Wang and Zhao, 2006)。この原因として、北西九州下に存在したといわれているホットプルームが南東方向に水平に流れ、スラブを「く」の字型に押し曲げた可能性が指摘されている(Shinjo et al., 2000)。しかしながら、沈み込んだフィリピン海プレートがこのように急激に折れ曲がる要因について未だ定量的に示された研究はない。本研究では、北西九州下から湧昇してきたホットプルームが、九州下に沈み込むフィリピン海プレートの急激な屈曲に及ぼす影響について、数値シミュレーションを用いて定量的に評価することを試みた。

2.手法
本研究では、Torii and Yoshioka(2007)による手法を用いて、2次元箱型熱対流モデルを構築した。本モデルで、北西九州下から湧昇するホットプルームと九州の南東沖から沈み込むフィリピン海プレートを数値シミュレーションで再現した。モデル領域は水平方向に1000km、深さ方向に700kmとし、格子点間隔は流れ場で20km間隔、温度場で5km間隔とした。ホットプルームに関しては、温度を固定した熱源を設定し、その中心部で約1900℃、その周囲で約1700℃に設定した。また、その熱源を、海溝から北西九州までの距離に相当する約450km、深さは200kmのところに配置し、熱源の大きさは水平方向に100km、深さ方向に150kmとした。スラブに関しては、モデル領域の右側温度条件にプレート冷却モデル(McKenzie et al., 1969)を適用し、フィリピン海プレートの形状を模したガイドに沿って5.8cm/yrの速度で物質を沈み込ませた。また、粘性率の式にはBurkett and Billen(2010)を用い、スラブの厚さは海洋プレートの年齢の関数として与えた(Yoshii, 1975)。フリーパラメターとして、スラブの厚さと粘性率の上限値を設定し、これらのパラメターを組み合わせて計算した。
これらの計算を通して、九州の南東部で、北西方向からほぼ水平に流れてきたホットプルームとフィリピン海スラブが衝突した際、スラブがどのような挙動をするのかについて調べた。

3.結果と考察
数値計算の結果、ホットプルームとスラブが衝突したとき、スラブの挙動が、①スラブが高角に曲がり、沈み込む、②スラブが高角に曲がり、ちぎれる、③スラブがあまり曲がらず、沈み込む、④スラブがあまり曲がらず、ちぎれるの、4つのパターンに大別されることがわかった。スラブが高角に曲がり、沈み込む①のモデルでは、スラブの厚さが薄く、粘性率の上限値が低くいときに多くみられることがわかった。このときのスラブの24~34 km、粘性率の上限値は5×1022~2.5×1025 Pasという結果が得られた。
この数値シミュレーションにより、水平方向に流れるホットプルームにより、スラブを屈曲させることが可能であることが示された。また、九州下に沈み込んだフィリピン海プレートの深さ70㎞辺りで見られる急激な折れ曲がりが、ホットプルームによる可能性があることを定量的に示すことができた。