日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG51] 機械学習による固体地球科学の牽引

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、コンビーナ:小寺 祐貴(気象庁気象研究所)、直井 誠(京都大学)、コンビーナ:矢野 恵佑(統計数理研究所)、座長:中野 優(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、加藤 慎也(京都大学防災研究所)、久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

09:15 〜 09:30

[SCG51-02] 機械学習による三次元デジタル露頭モデルを用いた凹凸度推定

*中村 拓夢1、喜岡 新2山田 泰広2 (1.九州大学工学部地球環境工学科、2.九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)


キーワード:機械学習、露頭、表面凹凸、HSV、三次元デジタル露頭モデル

近年の三次元デジタル化技術の発達により、露頭を3D化した三次元デジタル露頭モデルが使用され始めている。しかし、三次元デジタル露頭モデルから岩石の物性情報を抽出した例は少ない。UAVの空撮データから作成する三次元デジタル露頭モデルでは、露頭の色と形状といった視覚情報が使われている。形状の中でも凹凸に関する研究は、以前から地形学の枠組みでは行われているほか、大きなスケールでは、地下活断層の凹凸と厚さを含む形状の局所的な不均質性が、断層のすべりを制御している可能性に関する研究(Yamada et al., 2013)などが存在する。金属材料の破断面のような小さなスケールにおいても研究が進んでおり、破断面の凹凸形状は金属の種類や熱処理、加工度合いの影響を受けることが様々な研究によって指摘されている。しかし、露頭のような中規模なスケールの凹凸に関しては先行研究例が少なく、露頭の凹凸と岩石物性のリンケージに関する理解は乏しい。
そこで本研究では、露頭の形状の中でも凹凸に注目し、それと露頭を構成する岩石の物性の関係性を調べることを目的として、凹凸度の有効な指標、HSV色空間と凹凸度の関係、さらに機械学習モデルを用いた凹凸度の予測の可否を、以下の3ステップで検討した。(1)糸島半島野北海岸と男鹿半島鵜ノ崎海岸で作成した三次元デジタル露頭モデルから解像度を変化させたDEM画像を作成し、Terrain Roughness Index (TRI)、Roughness、Topographic Position Index (TPI)の3つの凹凸評価指標を各解像度で計算することで指標値の変化を観察した。(2)上記の三次元デジタル露頭モデルから作成したオルソ画像をHSV色空間で表示し、H、S、Vの各色空間と露頭の凹凸の評価手法として定義したGTRIとの間の決定係数を算出した。(3)野北海岸データを教師データ、HSV色空間のH、S、Vを説明変数、GTRIを目的関数とする機械学習モデル構築し、鵜ノ崎海岸のHSVオルソ画像からGTRI画像の予測を行った。
本研究では以下の結果が得られた。(1)TRIとRoughnessは解像度が下がる(pixel sizeが大きくなる)と凹凸の影響よりも露頭面の傾斜の影響を大きく受けることが分かった。特にRoughnessは傾斜の影響が大きい。TPIは本来傾斜を評価する手法であることから、解像度の変化による傾斜の影響はなかった。(2)野北海岸でのGTRIとの決定係数は、Hが0.744、Sが0.384、Vが0.762であった。また、鵜ノ崎海岸でのGTRIとの決定係数は、Hが0.764、Sが0.481、Vが0.867であった。このことから露頭の凹凸とHSVオルソ画像の間には相関性があり、Vが最も相関性が高いと考えられる。(3)機械学習モデルにより予測したGTRI画像及びDEM画像を基に作成したGTRI画像を比較すると、GTRI値に差があるものの亀裂などの規模の大きな凹凸の存在は予測できていることが分かる。
凹凸の指標として最も有効なものはTRIである。HSV色空間と凹凸には相関性があり、特にVとの相関性が強い。HSV色空間を使用した機械習モデルの構築は可能で、今後の精度向上が期待される。また、今後は前述した露頭の凹凸と物性の関係性を推定し、空間分布を算出するモデルの作成を目指し、本発表ではその一部を紹介する。