日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 変動帯ダイナミクス

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、コンビーナ:岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)、座長:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)

11:00 〜 13:00

[SCG52-P01] 動的積分方程式法の線形時間アルゴリズム

*佐藤 大祐1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:シミュレーション、動的問題、積分方程式法

積分方程式法はグリーン関数を用いる偏微分方程式計算手法であり、Okada modelを用いたインバージョン解析を筆頭に、地球惑星科学では幅広い応用がある。他方、そのシミュレーションでは計算時間が課題とされ、大規模計算の実装(e.g. Ozawa et al., 2021)に並んで、高速化アルゴリズムの需要がある(e.g. Ohtani et al., 2011; Ando, 2016)。空間に関する畳み込み演算を行う静的問題では、要素数に比例する程度のコストで求解可能な(差分法などと遜色ない)高速性を達するアルゴリズム(線形時間アルゴリズム)が古くから知られる(Rokhlin, 1985)。しかし、積分核の性質が異なる時空間に関する積分方程式の畳み込み演算が必要な動的問題では状況が異なり、特に地震性の過渡的断層運動を解く動弾性問題における線形時間アルゴリズムがない。Lapusta et al. (2000)は平面断層問題にてスペクトル法で準線形時間を達成できることを示し、Romanet and Ozawa (2021)は微小な起伏を伴う準平面断層問題にこれを拡張した。

最近、Sato and Ando (2021)は動弾性問題を含む波動方程式で任意要素分布(任意断層形状)に対して準線形時間を達成できる手法、高速領域分割階層行列法(FDP=H-matrices)を開発している。本研究はこれをさらに発展させ、波動方程式型の偏微分方程式で一般に線形時間を達成するアルゴリズム、高速領域分割平面波時間領域(FDP-PWTD)法を作る。計算アルゴリズムは、FDP=H-matricesの演算(以下の1-3)に平面波の重ね合わせ公式[以下の4, Ergin et al. (1999)の拡張]を加えることで構成される。(1)空間畳み込み領域を階層行列法(Hackbusch, 1999)でのように階層的に分割する。(2)積分核の低ランク表現を準備する。(3)FDP=H-matricesのアルゴリズムで畳み込み演算を疎行列演算へと軽量化する。(4)平面波展開によりFMMにおけるM2M, L2L, M2L演算を動弾性問題に拡張して更なる計算量の削減を行う。

発表では、上のアルゴリズム設計を議論するとともに、平面波展開が厳密になる2次元平面問題で手法をベンチマークし、動弾性の2次元面外問題と3次元波動方程式、粒子法への応用で実装結果を議論する予定である。