日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 沈み込み帯へのインプット:海洋プレートの実態とその進化

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (26) (Ch.26)

コンビーナ:藤江 剛(海洋研究開発機構)、コンビーナ:山野 誠(東京大学地震研究所)、森下 知晃(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、コンビーナ:鹿児島 渉悟(富山大学)、座長:鹿児島 渉悟(富山大学)

11:00 〜 13:00

[SCG56-P03] 北海道南東沖千島海溝アウターライズ地震による津波予測のための反射法地震探査データ及び海底地形データの解析結果に基づいた正断層マッピング

*野 徹雄1小平 秀一1今井 健太郎1尾鼻 浩一郎1藤江 剛1中村 恭之1白石 和也1三浦 亮1中西 正男2 (1.海洋研究開発機構、2.千葉大院理学)

キーワード:千島海溝、アウターライズ地震、マルチチャンネル反射法地震探査、海底地形データ

2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)の発生前からプレート境界型巨大地震の発生に関連した海溝海側斜面での正断層型地震(アウターライズ地震)の問題は指摘されていたが、東北沖地震発生以降、アウターライズ地震の発生とそれに伴う津波によるリスクに関する関心が増している。日本海溝周辺においては、東北沖地震発生後、新たな地震探査・自然地震観測・海底地形調査によるデータが取得され(e.g., Obana et al., 2021)、それらのデータに基づいた震源断層マッピングと津波シミュレーションによる評価の研究が進められてきた(Baba et al., 2020)。一方、根室沖~十勝沖にかけての千島海溝周辺においても、2010年代後半以降から地震探査によるデータ取得が新たに進められ、同時に海底地形データの取得も進んだ。その結果、取得された地震探査データや海底地形データを用いて、北海道南東沖千島海溝付近においても、日本海溝付近と同様の研究が実施できるようになってきている。
本研究で用いた地震探査データはマルチチャンネル反射法地震(MCS)探査が34測線であるが、2タイプのデータがある。1つはJAMSTEC深海潜水調査船支援母船「よこすか」を用いて1500 mストリーマーケーブルと380 cu.in.エアガンを用いた高解像度反射法地震探査によるデータで、もう1つは、JAMSTEC深海調査研究船「かいれい」及び海底広域研究船「かいめい」で取得された5550 mストリーマーケーブルと大容量エアガンアレイを用いたデータである。「よこすか」のデータに関しては、ランダムノイズ等のノイズ抑制処理を適用した上で、重合後深度マイグレーションによるイメージングを行った。「かいれい」「かいめい」のデータについては、多重反射波・ランダムノイズ等のノイズ抑制処理およびDeghost処理による広帯域化処理を重点的に実施した上で、グリッドトモグラフィによる速度モデルを用いた重合前深度マイグレーションによるイメージングを行った。
海底地形データについては、JAMSTEC船舶で取得されたデータを再処理して、それらのデータがカバーしていない部分についてはSRTM15+データ(Tozer et al., 2019)やGEBCOデータ(GEBCO Compilation Group , 2019; 2020)や先行研究データ(海上保安庁・海洋研究開発機構, 2011)等を重ねて、データの接合部は可能な限り不整合が生じないように処理した。ただし、本研究で使用したデータの品質やその分布によって、根室沖以西は相対的に解像度の良いデータが得られているが、根室沖以東はJAMSTEC船舶で得られているデータがないため相対的に解像度が悪いデータとなっている。また、作成したDEM(Digital Elevation Model)データからDip angleやDip azimuthのアトリビュート処理したイメージやアジア航測による赤色立体地図(Chiba et al. 2008)も作り、空間的な断層の接続の評価に用いた。
本発表では、先行研究の結果(Nakanishi, 2011)と、MCSデータ解析及び海底地形データ処理の結果をSchlumberger社製のPetrelに登録して、襟裳海山付近から納沙布断裂帯付近までに関して、海溝海側斜面における正断層マッピングを行い、各々の断層の走向や傾斜や変位量等を求めた結果について報告する。なお、本研究は、科研費基盤(A)「千島海溝沖アウターライズ津波即時予測に向けた震源断層マッピングと津波評価」の一環として実施した。