[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

[SEM16-05] MT応答関数の統計的性質の評価に基づくスタティックシフト補正法の提案

*山下 凪¹、後藤 忠徳¹ (1.兵庫県立大学)

キーワード：地磁気地電流法（MT）、地球統計学、ヴァリオグラム、スタティックシフト

地熱エネルギーの利用において、フラクチャや地熱貯留層などの空間分布を詳細に把握することが求められる。地磁気地電流法（MT）は、地熱地域の地下構造推定に用いられる地球物理学的手法の 1 つである。MT法では、周波数毎の見掛け比抵抗や位相（MT応答関数）の特徴に基づいて、地下の比抵抗構造の推定を行う。地表付近の小スケール不均質による影響（スタティックディストーション）はMT応答関数を大きく歪めることが知られている。この影響の補正方法はいくつか提案されてはいる。しかしながら、補正において加味すれば有効に働くと期待される、MT応答関数の空間分布の特性についてはあまり議論がされていない。
　そこで本研究では、3次元の地下比抵抗構造を仮定して、数値計算によって得られたMT応答関数の空間的な分布を求めた。ここでは地球統計学的手法のうちのヴァリオグラムを用いて、MT応答関数の空間相関性を調査した。そして、スタティックシフトがMT応答関数に及ぼす影響の度合いを同法で評価し、スタティックシフトの影響を補正する新たな手法を開発した。その結果、スタティックシフトを与えると、見掛け比抵抗が空間相関性を持つ範囲が大きく縮むことがわかった。また、数値シミュレーションの結果、見掛け比抵抗の相関性の範囲は、位相と同程度かそれより広くなることがわかった。このような見掛け比抵抗と位相の空間分布の関係に基づき、見掛け比抵抗の空間分布を適切な範囲で平滑化することでスタティックシフトの影響を補正する新たな手法を開発した。数値シミュレーションを用いて本手法を評価したところ、地下比抵抗構造解析の精度向上が認められた。