日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS06] 地震波伝播:理論と応用

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、新部 貴夫(石油資源開発株式会社)、コンビーナ:岡本 京祐(産業技術総合研究所)、座長:江本 賢太郎(東北大学大学院理学研究科)、西田 究(東京大学地震研究所)

16:45 〜 17:00

[SSS06-11] 地球自由振動に関連したルジャンドル倍関数の漸近展開

*吉田 満1 (1.なし)

キーワード:地球自由振動、ルジャンドル倍関数、漸近展開

不均質な地球モデルに対する地球自由振動の理論計算はPekeris and Jarosh (1958)やAlterman・他 (1959)により始められた. 地球の余緯度方向の運動方程式はルジャンドル倍微分方程式で構成されその解はルジャンドル倍関数で表わされる. ルジャンドル倍関数の次数 nが十分大きいとき地球自由振動及び長周期表面波の理論的位相速度はルジャンドル倍関数の近似式を使って求められる. 次数 nの大きさについては不明のように見える[斎藤 (1964)]. この近似式によりBrune・他 (1961)は1960年のチリ地震による伸び縮み(spheroidal)振動から理論的に位相速度を求め, 小さな次数のモードに対しても観測値とともに表示した. 他方, この近似式から計算される波長や位相速度は小さな次数 nに対しては意味がないという指摘 [佐藤 (1978)]もある. 全地球モデルとして提唱された横等方性モデル PREM [Dziewonski and Anderson (1981)] においては伸び縮み(spheroidal)振動では基本モードの次数0から165まで, ねじれ(torsinal)振動では基本モードの次数2から67までの固有周期の理論値と観測値が比較され良い一致性がみられる. 長周期である小さな次数の基本モード 0S0 - 0S6では異方性モデルと等方性モデルに対する固有周期はほぼ等しいが短周期では差が大きくなる;異方性モデルに対する群速度は観測値と整合性が良い等が報告されている. 変分法による理論的群速度はルジャンドル倍関数の近似式で求めた位相速度を使って求められる[Takeuchi and Saito (1972)]ので, 近似式の特性を知る事は球対称地球モデルや非球対称地球モデル[Tanimoto (1984); 望月 (1989); Tsuboi et al. (2003); 竹内 (2009)]の地球自由振動や長周期表面波の分散解明には有益であると思われる. 本稿は次数 nが小さいとき自由振動の波長や振幅にルジャンドル倍関数の漸近展開の高次項の成分がどの程度含まれているかを定量的に評価して近似式の妥当性又は注意点を検討する.
本解析では地球自由振動の解は極座標系でルジャンドル倍関数が漸近展開項の第1項, 第2項, 及び第3項に展開されて球面調和関数により表現されると仮定する. 計算は小さな次数n=0, 1, 2, 3, 4 に対して計算される. 以下に計算結果の例を示す. 次数 n=2に対する第2項と第3項の振幅は余緯度が60-120度の範囲でそれぞれ第1項の4%と0.4%である. 第1項の波長は16,012 kmであるのに対して第2項と第3項の波長はそれぞれ11,437 kmと8,895 kmである. 又, 常時地球自由振動 [西田 (2009)]に対応する伸び縮み振動の次数 n=29では第2項と第3項の振幅はそれぞれ第1項の振幅の0.4%と0.007%である. 第1項の波長は1,356 km であるのに対して第2項と第3項の波長はそれぞれ1,312 kmと1,270 kmである. ルジャンドル倍関数の次数と漸近展開項の序数をそれぞれ n, kとすると, 波長Lに関して Lnk = Ln-1k+1という関係があることが示唆される.