日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS07] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2022年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大谷 真紀子(東京大学地震研究所)、コンビーナ:岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、奥脇 亮(筑波大学生命環境系山岳科学センター)、コンビーナ:金木 俊也(京都大学防災研究所)、座長:金木 俊也(京都大学防災研究所)、大谷 真紀子(東京大学地震研究所)

10:15 〜 10:30

[SSS07-18] 動的破壊モデルから考察する複雑な断層形状がもたらす条線への影響

*青木 拓実1金子 善宏1、Kearse Jesse2 (1.京都大学、2.Victoria University of Wellington)

地震の強震動分布を決定する要因の1つである地震の破壊伝播方向を、古地震に対して求めることは重要な課題である。近年、過去の地震で観測された条線と単純な平面断層の動的破壊モデルを用いて、地震時に断層面上に記録される条線の湾曲と破壊伝播方向との間に関係性があることが示され(Kearse et al., 2019; Kearse and Kaneko, 2020)、地質的観測から破壊伝播方向を推定できる可能性が提示された。一方で、複雑な断層面で記録された条線には、平面断層で推定される湾曲とは凹凸が逆向きになっているものも報告されている。このような湾曲が逆向きになっている条線を説明するため、本研究では地表付近に形状を与えた断層や複雑な形状を持つ断層モデルを用いて地震破壊のシミュレーションを行った。その結果、平面断層の場合とは逆向きの凹凸を持つような条線が得られた。これは、一様な応力場を持つ断層に形状を与えることで断層面上の初期応力が変化し、特にその鉛直成分の変化によって逆向きの湾曲が得られたと考えられる。また、初期応力が深さとともに増加するようなより現実的なモデルでは地表面近くで逆向きの湾曲が得られるようなパラメータ範囲が狭く、地表付近で湾曲を逆向きにすることは難しいこともわかった。これは、観測された条線のほとんどが平面断層モデルで推定される湾曲方向と一致することと整合性がある。本研究の結果から、複雑な断層形状を持つ地点での条線の解釈には地形の影響を考慮する必要があり、条線の湾曲から破壊伝播方向を推定する際には断層形状が単純な地点での観察を用いるべきであると考えられる。