日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 地殻構造

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (21) (Ch.21)

コンビーナ:山下 幹也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、コンビーナ:東 龍介(東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター)、座長:山下 幹也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

11:00 〜 13:00

[SSS08-P01] 茨城県北部における後続波の観測と地殻内反射面の推定

*椎名 高裕1内出 崇彦1堀川 晴央1今西 和俊1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:地殻内地震、茨城県北部、S波後続波、反射面

2011年東北地方太平洋沖地震以降,茨城県北部および福島県浜通りでは地殻内地震の活動が活発化している.これらの地域では深さ10 km以浅の活動に加えて,地殻内地震の発生深度としてはやや深い,深さ15-20 kmでも地震の発生が確認されている.このやや深い地震の活動域は飯高・他 [2019, JpGU]や臼田・他 [2020, JpGU]が稠密地震計アレイの解析から推定したS波反射面の深さと一致する.顕著なS波反射波の励起は流体の存在を示唆するため,同地域における地震活動には地殻流体が密接に関係していると考えられている[飯高・他, 2019].
産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)では2016年6月から茨城県北部で臨時観測網を展開し,地震観測を実施している.この臨時観測網は茨城県常陸太田市・高萩市にまたがって,5 km程度の間隔で設置された7つの観測点で構成される.この観測データから,茨城県北部下で発生した地殻内地震を中心に,明瞭なS波後続波が観測された.
そこで本研究では,GSJ臨時観測網および周辺の定常地震観測網で観測されるS波後続波を用いて茨城県北部下の反射面の分布を詳しく調べ,地震活動との関係を検討する.本研究では2ステップの解析を行った.まず,気象庁一元化震源カタログの検測記録を用いて茨城県北部および福島県浜通りで発生した地震の震源位置を再決定するとともに, 1次元速度構造を推定した.この解析にはMCMC法によるShiina and Kano [accepted]の手法を用いた.次に,GSJ臨時観測点および周辺のHi-net観測点(N.THGH,N.KIBH,N.JUOH)で同定し,直達S波からの遅延時間を用いて反射面(散乱点)の位置を推定した.理論遅延時間は,1ステップ目で得られた震源位置と1次元速度構造を用いた.
以上の解析から,茨城県北部ではGSJ臨時観測網直下の深さ10-15 km程度に反射面(散乱点)を仮定することで観測されたS波後続波の遅延時間を説明できることがわかった.この深さは飯高・他 [2019]等で推定された反射面の深さと同程度である.さらに,反射面(散乱点)の期待される範囲は地殻内地震と相補的な分布であることがわかった.すなわち,茨城県北部におけるS波後続波の励起域と地震の活動域では地殻構造の特性が異なることが示唆される.

謝辞:
本研究では国立研究開発法人 防災科学技術研究所のHi-netの観測波形データおよび気象庁一元化処理震源カタログを使用しました.本研究は,文部科学省の「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト) JPJ010217」の助成を受けたものです.