日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地震活動とその物理

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:楠城 一嘉(静岡県立大学)、コンビーナ:直井 誠(京都大学)、座長:楠城 一嘉(静岡県立大学)、熊澤 貴雄(東京大学 地震研究所)

09:30 〜 09:45

[SSS11-03] 非定常ETASモデルで捉える能登半島群発地震活動の地域的変化

*熊澤 貴雄1尾形 良彦2 (1.東京大学 地震研究所、2.統計数理研究所)

キーワード:群発地震、常時地震活動、非定常モデル

地震時系列データからは様々な統計量を抽出できるが、中でも背景地震活動強度は地震活動の予測の観点からも重要な意味を持つ。我々の研究ではETASモデルの背景地震活動度の時間変動をベイズ法で推定する点過程モデルを用い、2020年末から発生した石川県能登半島の群発地震活動に適用して、その地震活動の特徴を調べた。

能登半島では2018年ごろから地震回数が増加傾向にあり,2020年11月末から地震活動が活発化して現在に至っている.これらの活動は大きく4つの震央クラスターに分かれ,従来から活動していた南東部領域では2020年11月末に14km以深へ移動した.以降,他3領域で順次活発化している.2021年11月6日時点での最大地震は2021年9月16日に北東部領域で発生したMJ 5.1である. GNSS観測では2020年11月末頃から非定常な変化が見られ,輪島2-珠州観測点および珠洲-舳倉島観測点の基線距離で約1cm程度の増加,及び珠州観測点の舳倉島との比高ではバラツキ誤差が大きいが3cm程度の隆起が観測されている.

各領域の群発地震活動に非定常ETASモデル (Kumazawa and Ogata, 2013) を当てはめた.このモデルは従来のETASモデルの背景強度と余震的誘発率のパラメータが,時間に依存する関数と仮定し,これらをベイズ法で推定する.背景強度は対象領域全般のゆっくりした応力変化や流体貫入による断層弱化などに起因すると考えられる. 余震的誘発率は主に領域内の先行地震による連鎖効果の変化 (余震的誘発率) を示す.

南東部領域の活動は初め領域の中央付近に分布していたが,2020年に入って活動が北東の方向へと移動し,2020年11月30日に活動が深部へ移動した際に静穏化した.同時に深部では,浅部の地震群をとり囲むようにドーナツ状に活発化し,背景強度は現在に至るまで増加傾向にある.
南東部領域深部の活発化以降、2ヵ月から3ヵ月遅れて先ず西部領域の活動度が上がり,次いで北部および北東部領域の地震活動度が順次上昇した.これらの領域の背景地震活動は、各領域の地殻変化を良く反映していると思われるGNSS 観測時系列の変動パターンと比較的対応が付く.