日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 環境地震学の進展

2022年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 拓人(弘前大学大学院理工学研究科)、コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、小原 一成(東京大学地震研究所)、コンビーナ:酒井 慎一(東京大学地震研究所)、座長:前田 拓人(弘前大学大学院理工学研究科)、西田 究(東京大学地震研究所)、小原 一成(東京大学地震研究所)、酒井 慎一(東京大学地震研究所)

10:00 〜 10:15

[SSS13-05] 愛媛県久万高原町南東部において観測される繰り返し地震波形の時間分布

*土井 一生1小原 一成2王 功輝1、釜井 俊孝1千木良 雅弘3 (1.京都大学防災研究所、2.東京大学地震研究所、3.深田地質研究所)

キーワード:繰り返し地震波形、石灰石、採掘

小原(2021)は愛媛県久万高原町に位置する防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net; 防災科学技術研究所、 2019)柳谷観測点において、継続時間数秒程度の微弱な地震動が繰り返し観測されることを指摘している。近くにある石灰石の鉱山である鳥形山における砕石発破の地震波形記録と特徴が似ていること(振幅は10分の1程度)、ある程度時間的にまとまって出現すること、同様の地震波形記録が国内のほかの石灰石の産地で認められることから、小原(2021)は石灰の採掘と何らかの関係がある現象を反映しているのではないかと考えた。一方、土井ほか(2015)では、柳谷観測点と鳥形山の間にある川下地すべりにおいて、地震時の地すべりの挙動を把握するための連続地震観測アレイ(地震観測点3点)を展開している。石灰石はこれらの観測点が並ぶ方向と平行に近い方向に分布するため、合わせて解析することで震源がある程度拘束できると考えられる。そこで、Hi-net柳谷観測点と地すべりの地震観測点における地震波形記録を用いて、小原(2021)によって指摘されている繰り返し地震波形の特徴と時間分布について明らかにした。
 まず、繰り返し地震波形の初動走時から震源を推定したところ、観測点が直線に近い形に並ぶため解の分解能が低いものの、鳥形山を震源としても矛盾のない結果が得られた。また、砕石発破の地震波形と繰り返し波形の観測点間の相対走時はほぼ同じであることから、震源は鳥形山近傍と考えられた。さらに、高周波成分(10 Hz程度)が卓越する地すべり地内の観測点においては、繰り返し地震波形の初動極性が明瞭に判別され、砕石発破と逆符号(ダウン)を呈した。
 続いて、低周波成分(2-3 Hz程度)が卓越する地すべり地外尾根部の観測点における2014年11月1日から2016年4月30日までの連続地震波形記録を用いて、2016年1月16日18時16分のイベントをテンプレートとして相関係数が0.7以上となるタイミングを相互相関関数の計算によって調べたところ、1時間に20個以上のイベントが検出される時間帯が多く見られる一方で、1時間に一つもイベントが検出されない時間帯も同様に多く認められた。一旦まとまってイベントが検出されると8時間単位で継続する場合がほとんどで、その時間帯は解析期間を通じて決まっていた。一方、多くの日曜日や年末年始においては一つもイベントが検出されなかった。これらのイベント発生の時間分布は、繰り返し地震波形が石灰鉱山の採掘に伴う何らかの活動に起因することを示唆する。
 鳥形山において石灰鉱山を操業する鉱山会社のホームページによれば、砕石発破され収集された石灰石は長さ数百mの立坑に投じられたのち、立坑下部から取り出され破砕されベルトコンベアで運び出される。浅部の地震波速度構造や三次元的な位置関係を踏まえて地すべり地における繰り返し地震波形の極性を今後検討することで、立坑への投石あるいは立坑下部からの採掘された石灰石の取り出しが繰り返し波形の震動源となり得るか今後検討したい。

謝辞: Hi-netの地震波形記録を使用させていただきました。記して感謝します。