日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT38] 地震観測・処理システム

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (26) (Ch.26)

コンビーナ:鈴木 亘(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、コンビーナ:松元 康広(株式会社構造計画研究所)、座長:鈴木 亘(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

11:00 〜 13:00

[STT38-P07] 波面の観測点からの逆伝播を利用した簡易震源推定方法

*関口 渉次1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:震源決定手法

通常、観測点での地震波P相やS相の到着時刻の読み取り値を使って震源決定をするが、その際には、地震毎に読み取り値をまとめることやP相かS相かの分別をしなければならない。連続して地震が発生している場合は困難なことが多い。そこで、今回はそれが必要とならない簡便な手法を開発したので報告する。観測データは読み取りの時刻情報のみを使いP波S波関係なく観測点からP波とS波両方を伝播させ、波面がたくさん重なった点を震源とする。地震波は波線理論に基づいて計算した走時の等時面を考える。走時データは観測点ごとにそこを始点としてあらかじめ計算しておく。観測点ごとに読み取り値の時刻をもとに、時刻をさかのぼって一定時間ごとに対象領域の格子点のどこに波が到着しているか判定し、届いている格子点にポイントを与える。高スコアところが震源である可能性が高いので、適切な閾値を設定してこのスコアから震源を推定する。時間も位置も離散的な値となるので決定精度はその間隔に依存する。有限の計算時間、メモリ容量のため無制限に間隔を小さくはできない。
手法の検証のため、一辺100kmの立方体領域を対象とし人工的な震源、観測点を与え、理論走時を読み取り値としその値から震源が推定できるか確認した。Vp = 10 km/s, Vs = Vp /1.7の一様媒質、格子点間隔は0.5km,時間間隔は0.1sとした。複数地震(8個)が同時に発生し読み取り値が重なっている場合でも、観測点が16点ほどあれば問題なく推定できた。
また、この検証により、観測点は実際の観測網のように不規則に分布している方がよいことがわかった。規則正しく格子状に分布していると震源位置以外のところにも高スコア箇所が出現する傾向がみられた。
極座標系でも同様のことが確認できた。
計算時間は十分短く、およそ解析対象データ時間の一桁以上小さい値となった。
ここまでをまとめると、たくさんの地震が発生する状況でこの手法を使えば震源分布の概略を素早く把握するのに役立つ可能性があることを示せただろう。
この手法では離散化間隔のサイズにより決定精度に制限がかかるが、この手法で推定した震源をもとに走時を計算して実際の読み取り値と比較することにより、読み取り値の地震毎のグループ分け及び位相の弁別が可能となるので、これらの情報を元に次の段階の精密震源決定を実施すれば、精度の高い震源決定が可能になるだろう。
今後は、実際の読み取りデータを用いてさらに検証してくことが重要であろう。