日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 合成開口レーダーとその応用

2022年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、コンビーナ:朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)、座長:姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)

11:30 〜 11:45

[STT39-04] D-InSAR解析を用いたネパール・ラムジュン郡の高ヒマラヤ地域における地すべり性地表変動観測

*宇佐見 星弥1佐藤 浩2八木 浩司3 (1.日本大学大学院理工学研究科地理学専攻、2.日本大学文理学部、3.山形大学地域文化教育学部)

キーワード:PALSAR-2、ネパール、地すべり

世界有数の地すべり地帯を有するネパールでは,高起伏な地形により現地観測が難しく,地すべりの継続的な監視・早期発見が課題となっている。D-InSAR(Differential Interferometric SAR)はアンテナからマイクロ波を2回照射し,その位相差をとることで地表変動量を計測する技術であり,地すべりの変動観測にも応用されている(鈴木ほか,2010; 佐藤ほか,2012など)。
宇佐見ほか(2021)はJAXAが打ち上げたSAR衛星(ALOS-2)に搭載されたPALSAR-2のデータを使用してネパールのMarsyangdi川右岸に2箇所の地すべり(Fig.2; Site1, Site2)を検出し,4年間にわたる長期間の観測に成功した。しかし,Marsyangdi川の支流における地すべりの分布は明らかにされておらず,広域での地すべり分布図作成が課題となっている。また,地すべりの観測事例が少ないネパールにおいて,複数箇所の地すべりの変動量を対比し,その地域性を論じた研究例は少なく,事例の蓄積が急務である。そこで,本研究では宇佐見ほか(2021)が対象とした範囲を広げ,広域における地すべりの検出と変動量の観測を行った。使用したPALSAR-2データは,北行・右向きに撮影した2015年8月13日から2019年12月26日のものである。
D-InSAR画像を判読した結果,Marsyangdi川の支流であるKhudi khola (river) において地すべりによる位相変化を検出した(Fig.2; Site3)。この場所では,Gallo and Lavé (2014) により斜面崩壊の発生が報告されており,地すべりの変動域が斜面崩壊を起こした範囲よりも広範囲に広がっていることが明らかとなった。また,検出した地すべり変動は継続しており,今後も継続的な監視が必要である。

謝辞
本研究の一部に科学研究費19H01368を利用するとともに,利用したALOS-2データについては東大震研共同研究2021-B-03の枠組でJAXAから提供したものを用いました。陰影起伏図の作成にはAW3Dデータ(https://www.aw3d.jp/)を利用した。

参考文献
宇佐見星弥・佐藤 浩・八木浩司(2021)差分干渉SARにより検出されたネパール,マルシャンディ川沿岸の地すべり性地表変動とその変動特性.日本地球惑星科学連合2021年大会予稿集,STT36-03.
Gallo, F. and Lavé, J.(2014)Evolution of a large landslide in the high himalaya of central Nepal during the last half-century. Geomorphology, 233, 20-32, DOI: 10.1016/j.geomorph.2014.06.021.