日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 合成開口レーダーとその応用

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (27) (Ch.27)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、コンビーナ:朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[STT39-P07] InSARによるGorkha地震の余効変動及びヒマラヤの地震間変動検出の試み

*長岡 頌悟1高田 陽一郎1 (1.北海道大学 理学部 地球惑星科学科)


キーワード:InSAR、ヒマラヤ、地殻変動、Split Spectrum Method

ヒマラヤではインドプレートとユーラシアプレートの衝突に伴う急速な地殻変動が継続している(e.g., Jackson and Bilham, 1994)。こうした地震間地殻変動を高い空間分解能で詳細に捉えることは巨大地震の発生過程や山地の隆起プロセスを理解する上で重要である。しかし地形が極めて険しいヒマラヤ山脈では干渉性が劣化するため、合成開口レーダーを用いた地震間変位の検出成功例は極めて限られている(Grandin et al.,2012; Sreejith et al., 2018)。本研究ではALOS-2データを用いたInSAR解析をヒマラヤに適用し、まず(1)大地震の余効変動を検出し、次に(2)地震間の定常的な地殻変動の検出を試みた。
上述(1)の通り、まず地震間変動よりも振幅が大きく検出例の多いGorkha地震(Mw7.8)の余効変動を捉えることを目標とした。この地域はScanSARモードによって多くの画像が撮像されているため、本研究でもまずこれを用いた。地形が極めて険しいため、画像位置合わせを異なる手法によって複数回行うことで干渉性を大幅に向上させた。また電離層や水蒸気の擾乱の寄与を多項式曲面でフィッティングして除去し、補正後の画像をスタッキングすることで大幅にノイズを軽減した結果、先行研究であるWang and Fialko(2018)と整合的な余効変動シグナルを得た。
ヒマラヤのInSAR画像の多くは電離層擾乱の影響を強く受けており、これを軽減することが本研究において最も重要なポイントとなる。地震間変位は波長が長いので、多項式曲面でフィッティングすると地殻変動シグナルの一部も除去する可能性がある。そこで電離層擾乱の寄与を原理的に除去するSplit Spectrum Method (SSM, Gomba et al., 2016; Furuya et al., 2017)を適用することとした。この手法はSAR衛星が発するレーダーパルスの周波数帯域を分割するためにS/Nの低下を伴い、干渉性も低下する。帯域幅の狭いScanSARデータの場合はSSMを用いて電離層擾乱の寄与を除去できたのは一部のペアのみであったが、より帯域幅の広いStripmap Modeで撮像したデータの場合は多くの成功例を得た。なお、SSMによって推定した分散性位相の画像はS/Nが低いため、Median Filterを用いて平滑化したものをオリジナルの干渉画像から差し引くことで、滑らかな補正結果を得た。このように補正した一連の干渉画像を用いてSBAS法にもとづくInSAR時系列解析(Schmidt and Bürgmann, 2003)を行い、短周期変動を除去した。その結果は多項式曲面フィッティングを用いた場合よりも精度良くGorkha地震の余効変動を示した。
上記の解析フローを(2)地震間地殻変動の検出にも適用した。ヒマラヤの中でも地形が比較的緩やかなタコーラ・グラーベンに沿ってStripmap Modeで撮像したデータを用いてSSMとInSAR時系列解析を適用した。先行研究のGrandin et al. (2012)はC-band衛星のデータを用いており干渉性が低いため、L-bandを用いた本研究の方が広い領域で地殻変動を得ることが出来た。現在、結果の精度を検証中である。