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[SVC29-08] 斜長石の拡散モデリングを用いた深成岩体形成過程の制約 -三河地域に分布する深成岩体の例-
キーワード:マグマだまり成長、元素拡散、深成岩、斜長石
深成岩体、及びそのもととなるマグマだまりの成長過程は現在も残る問題の一つである。最も古典的には大量のマグマが貫入し、分別結晶化を起こしながら固結するモデルが提案された。現在は特にジルコンのU-Pb年代測定などの詳細な年代測定、岩体を取り巻く接触変成帯の温度構造を境界条件とした熱モデリングなどから、場合によっては数百万年に及ぶ間欠的なマグマ供給によって岩体が徐々に成長する過程が描かれつつある。一方でマグマの貫入頻度や貫入したマグマの付加様式、貫入温度など制約できていない情報が多い。とくに貫入を繰り返した場合のマグマだまりの高温状態の継続時間は、マグマの流動性、ひいては噴火可能性評価にもつながる情報である。
深成岩に最も一般的に含まれる鉱物の一つに斜長石がある。斜長石は顕著な塁帯構造を持つことで知られる。塁帯構造は拡散によってmodifyされるが、想定される長期的な活動に反して非平衡な塁帯構造を保つ場合が一般的にみられる。このことはマグマだまりが長く低温環境にあることを示唆する。原理的には、斜長石中の元素拡散の強度を調べることによって、拡散の程度に適合する温度履歴を推定することが可能と考えられる。本研究ではこの考察のもと、深成岩に含まれる斜長石中の元素拡散を用いて、マグマだまりの内側からマグマだまりの温度履歴を推定することを目標とした。この手法は火山岩においてdiffusion chronometryとして良く実用化されているが、深成岩への適用可能性を検討した研究報告は行われていない。本研究でははじめに、forward modellingを用いて、この手法の深成岩への適用可能性を評価した。モデリングでは深成岩体に典型的な温度履歴、斜長石の塁帯構造を用いて想定される拡散を計算した。加えて、実試料への適用に際して化学分析が必要になる。そこでLA-ICP-MSを想定した10~30マイクロメートル径での疑似的サンプリングを行い、各温度条件の判別可能性を見積もった。
本研究ではさらに、実試料への適用を試験的に行った。対象地域は領家帯に含まれる武節花崗岩、新城トーナル岩とした。2岩体は大きく異なる幅の接触変成帯を持つことで知られており、熱履歴にも差があることが期待される。新城トーナル岩の中心部と辺縁部、武節花崗岩の辺縁部からサンプルを採取し、手法の適用を行った。分析にはLA-ICP-MSを用い、Sr, Ba, Laの拡散程度の見積もりを行ったうえで、計算結果との対比を行った。解析の途中ではあるが、両岩体の辺縁部から得た試料中の斜長石について、許容される加熱条件に差があることが示唆される結果を得ている。今後は接触変成帯を用いた熱モデリングを併用することによって、より詳細に深成岩体中の温度構造の特定を進めることを計画している。
深成岩に最も一般的に含まれる鉱物の一つに斜長石がある。斜長石は顕著な塁帯構造を持つことで知られる。塁帯構造は拡散によってmodifyされるが、想定される長期的な活動に反して非平衡な塁帯構造を保つ場合が一般的にみられる。このことはマグマだまりが長く低温環境にあることを示唆する。原理的には、斜長石中の元素拡散の強度を調べることによって、拡散の程度に適合する温度履歴を推定することが可能と考えられる。本研究ではこの考察のもと、深成岩に含まれる斜長石中の元素拡散を用いて、マグマだまりの内側からマグマだまりの温度履歴を推定することを目標とした。この手法は火山岩においてdiffusion chronometryとして良く実用化されているが、深成岩への適用可能性を検討した研究報告は行われていない。本研究でははじめに、forward modellingを用いて、この手法の深成岩への適用可能性を評価した。モデリングでは深成岩体に典型的な温度履歴、斜長石の塁帯構造を用いて想定される拡散を計算した。加えて、実試料への適用に際して化学分析が必要になる。そこでLA-ICP-MSを想定した10~30マイクロメートル径での疑似的サンプリングを行い、各温度条件の判別可能性を見積もった。
本研究ではさらに、実試料への適用を試験的に行った。対象地域は領家帯に含まれる武節花崗岩、新城トーナル岩とした。2岩体は大きく異なる幅の接触変成帯を持つことで知られており、熱履歴にも差があることが期待される。新城トーナル岩の中心部と辺縁部、武節花崗岩の辺縁部からサンプルを採取し、手法の適用を行った。分析にはLA-ICP-MSを用い、Sr, Ba, Laの拡散程度の見積もりを行ったうえで、計算結果との対比を行った。解析の途中ではあるが、両岩体の辺縁部から得た試料中の斜長石について、許容される加熱条件に差があることが示唆される結果を得ている。今後は接触変成帯を用いた熱モデリングを併用することによって、より詳細に深成岩体中の温度構造の特定を進めることを計画している。