日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月27日(金) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

15:45 〜 16:00

[SVC30-08] 富士山での降灰堆積路面における車両走行実験の概要

*吉本 充宏1西澤 達治1久保 智弘1本多 亮1亀谷 伸子1石峯 康浩1山本 真也1中田 節也2、山川 淳也3藤井 敏嗣1、山梨県防災局 防災危機管理課火山防災対策室4 (1.山梨県富士山科学研究所、2.研究開発法人 防災科学技術研究所 、3.防衛大学校、4.山梨県防災局)

キーワード:火山災害、防災、災害対応、降灰、道路交通

火山噴火時の降灰は,地域経済や社会基盤に大きな影響を与える可能性が高い.車両が火山灰に覆われた道路をどの程度まで走れるかどうかは,避難,緊急車両の通行,物流の確保など,防災計画を作成する上で重要な課題である.一方で,降灰した道路での走行テストの事例は少なく,国内では3例しかない(九州地方整備局2015年,鹿児島市2018年,中部地方整備局富士砂防事務所2021年).これまでの実験では層厚や傾斜による走行の可否や制動距離の検証が行われているが,防災計画策定の参考にするには,事例数が十分とは言えない.
本実験では,堆積した火山灰の粒径や層厚が制動距離や走行に与える影響について検証するため,山梨県の富士北麓公園の駐車場にコースを造成して2021年10月22日〜11月8日の日程で実験を実施した.また,実験期間中,地方公共団体,消防,警察,ライフライン関連の会社など約70団体が各種車両を持ち込んで走行テストを実施した.
コースは平面,斜面,カーブの3つのコースで粒径や層厚を変えた合計19パターンを設定した.傾斜コースの斜度については,過去のテストにおける設定勾配が10〜12 %と極端な急勾配であったことから,富士吉田市内の代表的な通りの勾配である5%とした.火山灰は,粒径1 mm以下の富士山の細粒火山灰,2 mm程度の桜島の粗粒火山灰,5〜10 mmの富士山の1707年噴火の宝永スコリアを用意した.平面コースでは,それぞれの粒径の火砕物を1 cm,5 cm,10 cmの厚さで敷いたコースを作成し,細粒火山灰については,乾燥したコースの他に,湿潤状態のコースも作成した.スコリアついては20〜30 cm厚のコースも作成した.傾斜コースでは,細粒火山灰とスコリアの5 cm,10 cm厚の4パターン作成した.カーブコースは,R=30のカーブで平面と勾配2.5 %の下りカーブに1cm厚の細粒火山灰を敷き詰めたコースを作成した.車両は,車重や駆動方式の違いによる影響を見るために9車種を実験に使用した.また,駆動輪に金属チェーンないし,樹脂チェーンをつけての試験も行った.
実験の結果,従来の結果と同様に,厚さ10 cm以上の火山灰では前輪駆動や後輪駆動車は走行できなかった.一方,全輪駆動車は設定したすべての厚さのコースで走行可能であった.また,粒径によって,制動距離が伸びる層厚が異なる結果となった.今後,試験結果を詳細に解析し,降灰時の通行止めの基準や避難経路の選定など防災対策に活用していく予定である.
なお,本実験を実施するに当たり,国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所にはコース造成の支援をいただいた.