日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的⽕⼭

2022年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:堀田 耕平(富山大学)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

11:00 〜 11:15

[SVC31-08] 阿蘇カルデラ周辺の長期的沈降現象の変動源について

*大久保 美鈴1大倉 敬宏1及川 純2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.東京大学地震研究所)


キーワード:阿蘇カルデラ、GPS、地殻変動

熊本県の阿蘇カルデラ周辺では, 年間数mmの速度での長期的な沈降現象が観測されている(例えば村上・小沢, 2004). この原因については, 何らかの火山性の沈降(村上・小沢, 2004)や地下水汲み上げ・構造的運動 (田中, 2000) などが考えられてきたが, それを定量的に立証した研究はない. また, その沈降源は未解明である. 一方で, 阿蘇カルデラでは2003年に間欠的隆起現象が観測され, 国土地理院 (2004) はその隆起源を中央火口丘直下の深さ15.5kmのシルと推定している. このような地殻変動を変動源位置や変動量の観点から理解することは, 未だ解明されていない阿蘇火山の深部マグマの供給系路を明らかにする上でも非常に重要である.

そこで本研究では, GNSSによる地殻変動データ(おおよそ北緯32.5度〜34度, 東経130度〜132度の範囲の, 国土地理院のGEONET観測点および京都大学火山研究センター・防災科学技術研究所の設置点), および阿蘇中岳中央火口丘周辺や国道57号線沿いの水準測量データ(京都大学, 国土地理院など)を基に, 阿蘇カルデラの長期的沈降現象の変動源を推定した.

GPSデータは, Gipsy Oasis v6.4により計算された日々の座標値から, 年周・半年周変動の影響を除去したものを使用した. 長期間の水平方向のGPS座標時系列には広域テクトニクスの影響が重畳しているため, 地殻変動をブロック断層モデル(Mochizuki and Mitsui, 2016)もしくは3次元空間の二次関数で表現できると仮定し, それぞれのパターンについて火山性地殻変動成分を抽出した. 変動源には茂木の球状圧力源やシル, もしくはその双方を仮定して地殻変動を計算し(Mogi, 1958; Okada, 1992), 改良したHotta et al. (2016)の評価関数を用いて, グリッドサーチにより変動源パラメータの最適解を探索した.

水準測量実施時期をまたぎ, 豊後水道や日向灘でスロースリップ現象の発生していない時期である, 2004年10月から2008年10月の沈降期間を解析した結果, 広域テクトニクス補正方法や変動源の種類に依らず, 草千里地下5~7km付近に沈降源が推定された. この位置は, Sudo and Kong (2001) などで推定されているマグマ溜まりの位置に近接する. したがって, 少なくともこの期間に関しては, 阿蘇カルデラの沈降を草千里地下のマグマ溜まりの収縮により説明できる可能性が高いことが明らかになった.

謝辞:本研究では, 国土地理院のGEONETデータや水準測量データ, 防災科学技術研究所のV-NETデータ, 京大をはじめとするグループから提供していただいた水準測量データを使用している. ここに記して厚く御礼申し上げる.