16:15 〜 16:30
[SVC31-20] 2021年福徳岡ノ場噴火による漂着軽石の多様性と噴火に関する制約
キーワード:福徳岡ノ場、漂着軽石、ナノライト
2021年8月の福徳岡ノ場噴火で噴出し,10月以降に南西諸島~関東地方へと漂着した一連の軽石について,漂着形態の野外調査と岩石学的な研究を実施した.2ヶ月間・約1300kmの漂流を経てもなお,南西諸島へ漂着した軽石の集団(軽石筏)は多量の規模を維持しており,多様な特徴を持つ軽石が含まれていた.陸地へ漂着する形態も,高波で後浜や海食崖の上に打ち上げられたものもあれば,砂浜の汀線付近に漂着帯を形成するものもあり,漂着量と形態は海岸の向きや砂浜の有無によって異なっていた.殆どの漂着軽石は発泡した灰色の基質部に黒い粒を含んでおり,その見た目から「チョコチップクッキー」に例えられることもある.発泡した黒色の軽石や,灰色から茶色やくすんだ灰色に遷移する軽石も存在していたが,いずれの軽石も全岩化学組成は粗面岩の組成を示し,外見による区別は明瞭な化学組成の違いを示さない.
灰色と黒の軽石はともに斑晶鉱物として斜長石,単斜輝石,かんらん石を含む.顕微鏡による組織観察では,灰色の軽石は引き伸ばされた泡の構造を持つ一方で黒の軽石は円(球)形に近い泡の形を保っていることが示された.黒色軽石を構成する発泡ガラスは光学顕微鏡観察では茶色で透明な見た目をしており,茶色を呈する部分に微小な結晶は認められない.ラマン分光分析の結果,茶色のガラスからは磁鉄鉱のピークが検出されたため,ガラスの色の原因は磁鉄鉱のナノ粒子(ナノライト)であると考えられる.黒色軽石に含まれる高Mgかんらん石(~Fo92)は,平衡温度として約1200℃を示し,縁部では拡散プロファイルを示す.拡散モデリングから,周囲のメルトとの平衡に至る時間スケールは十数時間~50日程度と見積もられた.
灰色軽石と黒色軽石が直接接している部分に見られる明瞭な組織コントラストは,両者の粘性コントラストが生じたあとに2種類の軽石が接合し,噴火時の変形を被ったことを示唆する.このことから,ナノライトの析出とそれに伴うマグマ粘性率の増加が,爆発的だった福徳岡ノ場の2021年噴火の噴火準備プロセスに於いて重要な役割を果たしたと考えられる.
詳細は講演及び以下の論文を参照されたい.
Yoshida, K. et al. (2022) Variety of the drift pumice clasts from the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Japan. Island Arc, DOI:10.1111/iar.12441
灰色と黒の軽石はともに斑晶鉱物として斜長石,単斜輝石,かんらん石を含む.顕微鏡による組織観察では,灰色の軽石は引き伸ばされた泡の構造を持つ一方で黒の軽石は円(球)形に近い泡の形を保っていることが示された.黒色軽石を構成する発泡ガラスは光学顕微鏡観察では茶色で透明な見た目をしており,茶色を呈する部分に微小な結晶は認められない.ラマン分光分析の結果,茶色のガラスからは磁鉄鉱のピークが検出されたため,ガラスの色の原因は磁鉄鉱のナノ粒子(ナノライト)であると考えられる.黒色軽石に含まれる高Mgかんらん石(~Fo92)は,平衡温度として約1200℃を示し,縁部では拡散プロファイルを示す.拡散モデリングから,周囲のメルトとの平衡に至る時間スケールは十数時間~50日程度と見積もられた.
灰色軽石と黒色軽石が直接接している部分に見られる明瞭な組織コントラストは,両者の粘性コントラストが生じたあとに2種類の軽石が接合し,噴火時の変形を被ったことを示唆する.このことから,ナノライトの析出とそれに伴うマグマ粘性率の増加が,爆発的だった福徳岡ノ場の2021年噴火の噴火準備プロセスに於いて重要な役割を果たしたと考えられる.
詳細は講演及び以下の論文を参照されたい.
Yoshida, K. et al. (2022) Variety of the drift pumice clasts from the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Japan. Island Arc, DOI:10.1111/iar.12441