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[SVC33-04] 自然電位観測と噴気分析から推定される焼岳火山のマグマ熱水系
キーワード:水蒸気噴火、噴気、自然電位、熱水系
北アルプス南部に位置する焼岳は,気象庁の常時観測火山に選定されている活発な活火山である.近年では1907-39年に水蒸気噴火を繰り返し,1962-63年に山頂北側斜面で水蒸気噴火を起こして以降は噴火していないものの,周辺では数年おきに群発地震活動が起こり(大見,2019),2017年と2019年には空振を伴う火山性地震が発生するなど(気象庁,2020),活動の活発化が懸念されている.我々は山頂の噴気活動に着目して2013年から噴気孔の温度・ガス観測や,山頂部の火口の観察を行ってきた(齋藤ほか,2019).今回は2020-2021年に行った自然電位観測結果とこれまでの噴気分析結果を合わせて,焼岳火山のマグマ熱水系に関して得られた知見を報告する.
噴気分析の結果,焼岳山頂付近の噴気は温度やSO2/H2Sが低いものの,He-Ar-N2比ではHeの寄与が高いという特徴を示した.噴気凝縮水の同位体比は,北峰南に位置する噴気はマグマ性流体の高い寄与を示す一方で,山頂北斜面の1962-63火口や山頂北東の醇ヶ池火口の噴気は地域天水とマグマ水を結ぶ線上に位置せず軽い同位体値を示し,同位体分別の影響を被っていることが分かった.地磁気観測の結果からも,山頂北斜面に低磁化領域の存在が示唆されており,1962-63火口浅部には熱水系が発達している可能性が高い.
自然電位観測の結果,焼岳の北側と南側で大きく異なる電位分布を示すことが明らかとなった.南麓の中の湯登山口から山頂にかけての登山道沿いではV字の電位プロファイルを示し,登山道下部では「地形効果」の影響を,登山道上部では焼岳山頂への熱水上昇の影響を受けていると考えられる.一方山頂北側は電位が顕著に降下せず,地質構造が変化する地点で大きな正の電位異常を示しながら,山麓の中尾登山口へと緩やかな上昇を示した.この南北の電位分布の違いは,地下の地質構造の違いによって地下水の流動パターンが異なっていることを反映していると考えている.また山頂付近では,活発な噴気活動が認められる北峰南に加えて,山頂北斜面の1962-63火口付近でも正の電位異常が認められた.この結果も,北側斜面の1962-63火口下浅部に熱水系が発達している可能性を支持する.
噴気分析の結果,焼岳山頂付近の噴気は温度やSO2/H2Sが低いものの,He-Ar-N2比ではHeの寄与が高いという特徴を示した.噴気凝縮水の同位体比は,北峰南に位置する噴気はマグマ性流体の高い寄与を示す一方で,山頂北斜面の1962-63火口や山頂北東の醇ヶ池火口の噴気は地域天水とマグマ水を結ぶ線上に位置せず軽い同位体値を示し,同位体分別の影響を被っていることが分かった.地磁気観測の結果からも,山頂北斜面に低磁化領域の存在が示唆されており,1962-63火口浅部には熱水系が発達している可能性が高い.
自然電位観測の結果,焼岳の北側と南側で大きく異なる電位分布を示すことが明らかとなった.南麓の中の湯登山口から山頂にかけての登山道沿いではV字の電位プロファイルを示し,登山道下部では「地形効果」の影響を,登山道上部では焼岳山頂への熱水上昇の影響を受けていると考えられる.一方山頂北側は電位が顕著に降下せず,地質構造が変化する地点で大きな正の電位異常を示しながら,山麓の中尾登山口へと緩やかな上昇を示した.この南北の電位分布の違いは,地下の地質構造の違いによって地下水の流動パターンが異なっていることを反映していると考えている.また山頂付近では,活発な噴気活動が認められる北峰南に加えて,山頂北斜面の1962-63火口付近でも正の電位異常が認められた.この結果も,北側斜面の1962-63火口下浅部に熱水系が発達している可能性を支持する.