日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山の熱水系

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (24) (Ch.24)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、コンビーナ:神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)、座長:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

11:00 〜 13:00

[SVC33-P06] 霧島火山群硫黄山火口湯だまりにおける水質組成の経時変動 Part 2

森 啓悟1、*石橋 純一郎1,2松島 健1益田 晴恵3井川 怜欧4、大嶋 将吾5堤 彩紀5田島 靖久6 (1.九州大学、2.神戸大学、3.大阪市立大学、4.産業技術総合研究所、5.西日本技術開発株式会社、6.日本工営株式会社)

キーワード:化学組成変動モニタリング、熱水二相分離

霧島火山群硫黄山では,2018年4月に水蒸気噴火が発生により複数の火口で湯だまりが形成され,現在でも活発な噴気活動・噴湯現象が継続している.化学的手法による火山活動や熱水活動の評価を目的として,2018年7月から3年余りにわたって継続して湯だまりの温泉水を採取し化学分析を行っている.本研究では,それらの経時変動について議論を行う.
試料採取は,硫黄山南側に位置する南火口湯だまり(Y2a, Y2b),硫黄山から約500m離れた西火口湯だまり(W4),および周囲にあるいくつかの噴気孔に形成された小規模な湯だまりから行った.現地では、水温, pH, ORP(酸化還元電位), EC(電気伝導度)を測定した.持ち帰った試料について,陽イオン,微量元素はICP-OESとICP-MSにより,陰イオンはイオンクロマトグラフ(IC)により定量した.
湯だまり熱水の化学組成の経時変動の長期的傾向は、火口周辺の地熱活動の消長に対応している。噴火後3年間の地熱活動の衰退は、季節による降雨量変化の影響などがあるものの主に湯だまりの水位が段階的に低下することで特徴づけられており、第I期ー第V期に区分できる。活発な噴湯現象が認められた第I期から(噴火後~)南火口において水位低下が観察された第II期に(2019年5月~)移行する際に、南火口湯だまり熱水のCl/SO4比の低下とB/Cl比, As/Cl比の上昇が認められた。さらに西火口において水位低下が観察された第III期に(2019年12月~)移行する際には、西火口湯だまり熱水でCl/SO4比の低下とB/Cl比, As/Cl比の上昇が認められた。こうした地熱活動の衰退に伴う熱水化学組成の経時変動は、熱水の二相分離が地下で起こって気相が支配的な熱水が湯だまりに供給されるようになったことで説明できる。このことは西火口のすぐ横の道路側に噴気孔と湯だまりが形成された第IV期(2020年7月~)と、この噴気・噴湯活動が停止に向かう第V期(2021年1月~)においても、西火口湯だまりで同様な熱水化学組成の経時変動が観察されたこととも調和的である。