11:00 〜 13:00
[SVC33-P07] 霧島・硫黄山西火口で観測された間欠的熱水噴出現象
キーワード:間欠泉、間欠的熱水噴出現象、地電位
本研究では宮崎県えびの高原の霧島・硫黄山西火口で観測された間欠的熱水噴出現象について扱う. 2021年4月-7月にかけて, 西火口W4孔の湯溜まり(Fig.1)が17-70時間の周期で満水と干上がりを繰り返していることが確認された. W4孔には3か所の噴気孔(導管)があり, 熱水噴出は主に噴気孔Fsから確認され, 排水は3つの噴気孔から吸い込まれる(ドレーンバック)ように行われている. その1サイクルは次のようなものであった. ①噴気孔Fsから熱水が湧出し, 湯溜まりを形成し噴気孔は水没する. ②次第にFs孔からの噴気が目立つようになり, 熱水噴出からおよそ2時間後には, 噴気のみの噴出に移行する. ③熱水噴出から17-70時間後には噴気が停止して水位が急速に低下して湯溜まりが干上がり, その20-30分後には再び熱水が噴出する. これは水と蒸気が周期的に噴出する間欠泉と類似した現象であるが,これまで間欠泉現象の報告がなかった地域で突如現象が確認された非常に貴重な事例である.
そして,この現象に対する多項目観測 (タイムラプスカメラ,温度計,地電位計,地震計,空振計,傾斜計) を行った(観測機器の配置はFig.1を参照). 今回はこれらのデータを解析することで,熱水の噴出過程を明らかにするとともに熱水噴出の原因に迫ることを目的とした. さらに,これまでの間欠泉における研究では地中の導管や空洞に地下水が蓄積され,それが地熱により熱せられる (e.g., Mackenzie, 1811 ; Bunsen, 1847),もしくは地中に蓄積されたガスが導管内の水を押し上げる (e.g.,Kagami,2016)ことによって噴出が発生すると考えられている. しかし,実際に噴出のどのぐらい前に地下水が蓄積され始めるのかや,どのように地下水が流入して噴出に至っているのかといった部分に言及した研究例は少ない. 今回の研究では,観測項目の一つである地電位データの解析によって,地中での水の動きがどのように噴出に影響するのかという点で新たな知見が得られた. 次に, 本研究で得られた特に重要な観測事実を挙げる.
まず温度データでは, 噴気停止と共におよそ96 [℃] から70-80 [℃] まで急激に温度が低下し,熱水噴出と共に温度が急激に上昇することが確認できた. また,熱水噴出時は80-90 [℃] と比較的低温を示すが,熱水噴出から7-14分後には西火口の標高 (1233 m) での沸点である96 [℃] 付近の温度を保つようになる. また地電位データでは, 熱水噴出のおよそ2時間前に変動を開始していることが確認できた. ただし, 地電位変動は生じるものの地表では熱水の噴出は認められず, 一時的に微小な温度低下を生じさせているイベントも確認できた. これらの地電位変動は,地中で水が動くことにより生じる流動電位の可能性が考えられる. さらに地震波形データでは, 地電位変動後に20Hz以下の周波数帯域で信号の減少がみられ,噴気停止と共にその5-10Hz帯域で急激に信号が増加することが確認できた.これらの低周波数帯域での信号の変化は導管内部の現象をとらえている可能性がある.
以上の観測事実から,熱水噴出の原因として次のことを考えた.まず, 熱水噴出のおよそ2時間前に地電位変動開始と共に, 噴気孔下部につながる導管内部に導管壁から冷水が流入する.これによって,導管内でもともと生じていた熱水の沸騰を弱める.そして, さらに導管壁からの冷水の流入量が多くなると熱水から供給される大量の火山性ガス成分を含む気泡が流入した冷水を押し上げて噴出に至るのではないか.今後は空振計や傾斜計のデータも用いることで,間欠的熱水噴出現象の全体的なメカニズムの解明を目指す.
そして,この現象に対する多項目観測 (タイムラプスカメラ,温度計,地電位計,地震計,空振計,傾斜計) を行った(観測機器の配置はFig.1を参照). 今回はこれらのデータを解析することで,熱水の噴出過程を明らかにするとともに熱水噴出の原因に迫ることを目的とした. さらに,これまでの間欠泉における研究では地中の導管や空洞に地下水が蓄積され,それが地熱により熱せられる (e.g., Mackenzie, 1811 ; Bunsen, 1847),もしくは地中に蓄積されたガスが導管内の水を押し上げる (e.g.,Kagami,2016)ことによって噴出が発生すると考えられている. しかし,実際に噴出のどのぐらい前に地下水が蓄積され始めるのかや,どのように地下水が流入して噴出に至っているのかといった部分に言及した研究例は少ない. 今回の研究では,観測項目の一つである地電位データの解析によって,地中での水の動きがどのように噴出に影響するのかという点で新たな知見が得られた. 次に, 本研究で得られた特に重要な観測事実を挙げる.
まず温度データでは, 噴気停止と共におよそ96 [℃] から70-80 [℃] まで急激に温度が低下し,熱水噴出と共に温度が急激に上昇することが確認できた. また,熱水噴出時は80-90 [℃] と比較的低温を示すが,熱水噴出から7-14分後には西火口の標高 (1233 m) での沸点である96 [℃] 付近の温度を保つようになる. また地電位データでは, 熱水噴出のおよそ2時間前に変動を開始していることが確認できた. ただし, 地電位変動は生じるものの地表では熱水の噴出は認められず, 一時的に微小な温度低下を生じさせているイベントも確認できた. これらの地電位変動は,地中で水が動くことにより生じる流動電位の可能性が考えられる. さらに地震波形データでは, 地電位変動後に20Hz以下の周波数帯域で信号の減少がみられ,噴気停止と共にその5-10Hz帯域で急激に信号が増加することが確認できた.これらの低周波数帯域での信号の変化は導管内部の現象をとらえている可能性がある.
以上の観測事実から,熱水噴出の原因として次のことを考えた.まず, 熱水噴出のおよそ2時間前に地電位変動開始と共に, 噴気孔下部につながる導管内部に導管壁から冷水が流入する.これによって,導管内でもともと生じていた熱水の沸騰を弱める.そして, さらに導管壁からの冷水の流入量が多くなると熱水から供給される大量の火山性ガス成分を含む気泡が流入した冷水を押し上げて噴出に至るのではないか.今後は空振計や傾斜計のデータも用いることで,間欠的熱水噴出現象の全体的なメカニズムの解明を目指す.