11:00 〜 13:00
[U09-P03] DONET・S-net水圧計を用いた津波バックプロジェクション解析:2022年1月15日のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火への適用
キーワード:バックプロジェクション、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ、津波
近年、DONET・S-netといった海底観測網が整備され、水圧計アレイによる津波の面的な観測が可能となった。地震アレイ観測を用いたバックプロジェクション(BP)法は、波形インバージョンのように多くの先験情報を用いることなく断層領域と断層破壊の伝播過程を推定することが可能であり、多くの巨大地震に適用されてきた(e.g., Ishii et al., 2005; Honda et al., 2011; Fukahata et al., 2014)。我々は、水圧計アレイの観測記録を使用することで津波にもBP法が適用可能であると考え、これまでに2016年福島県沖地震にBP法を適用し津波波源の推定を行なっている。
2022年1月15日にフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山が噴火し、その後日本時間20時頃からDONET・S-netの水圧計が水圧変化を記録した。この水圧変化は、(1)津波の到達予想時刻よりも早く水圧変化が始まったこと、(2)同時刻に日本列島で気圧変化が観測されたことから、火山噴火に伴って発生した気圧変化が励起したものだと考えられている。
Harkrider and Press (1967)は、大気中を波動が伝播する際に、大気と海洋がカップリングすることで発生する波の理論計算を行い、津波伝播速度とほぼ同じ速度で伝播する大気重力波によって津波が励起されることを示した。また、1883年のクラカタウ火山噴火によって発生したサンフランシスコの気圧記録と水圧記録の合成波形を計算し、大気重力波の基本モードと2次高次モードであるGR0とGR2が気圧計・水圧計の両方で観測される一方で、津波の到達時刻には気圧計において対応する波形が観測されないという結果を得ている。
本研究では、DONET・S-netの水圧記録に対してBP法を適用することで、日本近海における津波の伝播過程を検出した。BP法に必要な津波走時の計算には線形長波の仮定の下、Fast Marching Method (Sethian, 1999)とETOPO1(Amante and Eakins, 2009)を用いた。また、DONET・S-net観測点のうち、生の水圧波形と理論潮汐モデル(Matsumoto et al., 2000)との相関が0.9以上となった160観測点を用いて解析を行なった。
図1(A)と(B)に、20時と22時におけるBP法の結果を示す。それぞれの時間において、トンガ諸島の位置する南東方向から直線状の波面が伝播してくる様子が得られており、20時よりも22時のほうが振幅が大きい結果となった。
図1(C)と(D)は、S-net水圧記録と日本気象協会の気圧記録との比較の結果を示している。火山と気圧計を結ぶ大円経路上の水圧記録を比較すると、20時頃に第1波が気圧計・水圧計の両方で観測され、22時頃からは水圧計では振幅の大きい波が観測されるものの気圧計記録には対応する波が存在しない。大遠距離と到達時刻からそれぞれの波の速度を計算すると、第1波が294 m/s、第2波が245 m/sとなった。
これらの結果から、20時頃に到達した波は大気重力波の基本モードであるGR0に由来し、22時頃の第2波は大気重力波に励起された津波であると結論できる。
2022年1月15日にフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山が噴火し、その後日本時間20時頃からDONET・S-netの水圧計が水圧変化を記録した。この水圧変化は、(1)津波の到達予想時刻よりも早く水圧変化が始まったこと、(2)同時刻に日本列島で気圧変化が観測されたことから、火山噴火に伴って発生した気圧変化が励起したものだと考えられている。
Harkrider and Press (1967)は、大気中を波動が伝播する際に、大気と海洋がカップリングすることで発生する波の理論計算を行い、津波伝播速度とほぼ同じ速度で伝播する大気重力波によって津波が励起されることを示した。また、1883年のクラカタウ火山噴火によって発生したサンフランシスコの気圧記録と水圧記録の合成波形を計算し、大気重力波の基本モードと2次高次モードであるGR0とGR2が気圧計・水圧計の両方で観測される一方で、津波の到達時刻には気圧計において対応する波形が観測されないという結果を得ている。
本研究では、DONET・S-netの水圧記録に対してBP法を適用することで、日本近海における津波の伝播過程を検出した。BP法に必要な津波走時の計算には線形長波の仮定の下、Fast Marching Method (Sethian, 1999)とETOPO1(Amante and Eakins, 2009)を用いた。また、DONET・S-net観測点のうち、生の水圧波形と理論潮汐モデル(Matsumoto et al., 2000)との相関が0.9以上となった160観測点を用いて解析を行なった。
図1(A)と(B)に、20時と22時におけるBP法の結果を示す。それぞれの時間において、トンガ諸島の位置する南東方向から直線状の波面が伝播してくる様子が得られており、20時よりも22時のほうが振幅が大きい結果となった。
図1(C)と(D)は、S-net水圧記録と日本気象協会の気圧記録との比較の結果を示している。火山と気圧計を結ぶ大円経路上の水圧記録を比較すると、20時頃に第1波が気圧計・水圧計の両方で観測され、22時頃からは水圧計では振幅の大きい波が観測されるものの気圧計記録には対応する波が存在しない。大遠距離と到達時刻からそれぞれの波の速度を計算すると、第1波が294 m/s、第2波が245 m/sとなった。
これらの結果から、20時頃に到達した波は大気重力波の基本モードであるGR0に由来し、22時頃の第2波は大気重力波に励起された津波であると結論できる。