日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大規模な水蒸気場と組織化した雲システム

2023年5月25日(木) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (オンラインポスター)

コンビーナ:高須賀 大輔(東京大学大気海洋研究所)、横井 覚(海洋研究開発機構)、三浦 裕亮(国立大学法人 東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、濱田 篤(富山大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[AAS05-P07] 対流結合した西進慣性重力波の位相速度と鉛直構造の関係

*上好 慧1安永 数明1濱田 篤1田口 文明1 (1.富山大学)


キーワード:熱帯気象、対流結合赤道波

対流結合赤道波(convectively coupled equatorial waves : CCEWs)は、赤道波と積雲対流が結合したものである。CCEWsは大規模循環とより小規模なメソ対流系の中間的なスケールを持ち、両者を繋ぎながら降水活動に大きな影響を与えていることから、熱帯気象において重要な役割を担う。しかし、CCEWsの基本的なメカニズムは未解明な部分く、CCEWsは乾燥大気の枠組みで理論的に導出される赤道波の位相速度よりも遅くなることが知られている。その理由は依然として分かっていない。本研究はこの問題に関する手掛かりを得ることを目的に、CCEWsの位相速度の“速い”成分と“遅い”成分に関して、降水に伴う大気場データ(気温と鉛直流)の変動の特徴と位相速度の関係を調べた。本ポスター発表では、特にCCEWsの一種である西進慣性重力波(westerly inertial gravity wave : WIG)に着目する。
WIGの速い成分と遅い成分にフィルタリングした温度と鉛直流の時系列を基にコンポジット解析を行った結果、遅い成分は速い成分に比べて大きな傾きを持つと共に、対流圏下層において90度位相差もった温度と鉛直流の変動(重力波的な構造)の深さがより浅いという特徴が確認された。これらの特徴は、降水と鉛直モード展開された鉛直流の位相スペクトルとクロススペクトルにおいて、等価深度が浅い(遅い成分)ほど第2モードが先行(傾きの増大)し、相対的に第3モード(より浅い構造)が卓越するというかたちで示唆的に現れていた。
示唆された鉛直構造は、実際の温度・鉛直流偏差と鉛直モードのコンポジット解析の比較から、ある程度整合的に説明することができる。また、WIG(n=1)の速い成分と遅い成分の位相速度は、下層の変動の深さに対応して、それぞれ第2モード(27.5 m/s), 第3モード(19.4 m/s)の重力波速度に非常に近い値を示していた。これらの結果は、WIGの位相速度は下層の重力波構造の深さが重要であることを示唆するものである。乾燥大気の枠組みでは位相速度の遅さは、鉛直構造の浅さで説明されるが、本研究結果はそうした解釈と矛盾しない。