日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 気象学一般

2023年5月21日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[AAS06-P06] アメダスデータに見る比良山系の突風の統計的特徴

*奥野 将1野田 優人1渡邉 未夢1長田 春果1川見 真由1小郷原 一智1 (1.京都産業大学)

キーワード:アメダス、突風、局地風

比良山地は滋賀県の琵琶湖西岸に位置する。比良山地東麓に吹く局地風“比良おろし”は丹波高地から琵琶湖に向かって比良山地南東側の急斜面を駆け降りるように吹く、最大瞬間風速30 m/s以上にものぼることがある北西の風である。この局地的な強風は、山麓を走るJR湖西線や湖上船舶の運航、農作物の育成等に大きな影響を及ぼす。特にJR湖西線は全線高架となっているため比良おろしの影響を強く受け、列車の運転見合わせや徐行による遅れが度々生じている。このような被害を防ぐためには、比良おろしの理解が不可欠である。しかしながら,当該地域の局地風に関する研究はあまりない.児玉 (1973)は琵琶湖周辺の湖陸風と山谷風について述べているが,比良山系の突風については扱っていない.松井 (2021)や松井,武田 (2001)は滋賀県内に多数設置した風速計データを用いて,局地風の特徴について詳細に報告している.南 (2022)も,比良おろし頻度の季節変化について述べている.しかしいずれにしても,比良おろしの定義が異なるため,整合的な結果が得られていない.さらに,突風率のみを用いて突風を定義すると,突風率が極端に大きいイベントは平均風速が極端に小さい弱風イベントになるという問題がある.
そこで、本研究では滋賀県南小松のアメダスデータを用いて、突風の定義を突風率、または最大瞬間風速により複数通り定め、比良山系に吹く突風の統計的特徴を調べた。2008年〜2020年の146ヶ月の南小松アメダスのデータを用いて最大瞬間風速15m/s以上かつ突風率3以上の風が観測された日を抽出すると,突風事例は12件であった.突風発生時に典型的な気圧配置を4つのパターンに分類し,比良山地東部での突風発生時の統計的特徴を調べた。その結果、先行研究では3月・4月の春の季節に発生頻度が最も大きくなるとされていたが、12月や1月といった冬にも比良おろしが多く発生していることが分かった。夏から秋にかけての突風のほとんどは台風に関連していた.突風の定義を,最大瞬間風速が20 m/s 以上かつ突風率が2以上,とした場合,同期間の突風事例は21件であった.突風率のみを閾値とした場合には春に突風が多く発生し、最大瞬間風速のみを閾値とした場合には冬に突風が多く発生しているという結果が得られた.