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[AAS09-P03] 大規模アンサンブルデータによる北半球冬季成層圏対流圏結合
キーワード:成層圏対流圏結合、ENSO、QBO、大規模アンサンブルシミュレーション
成層圏準二年周期振動(QBO)が再現できる地球システムモデルMRI-ESM2.0とQBOを再現できないが水平高解像度(水平約60km)で対流圏循環の再現性の高い大気大循環モデルMRI-AGCM3.2Hでそれぞれ現実的なSST条件で大規模アンサンブル実験を行い、北半球冬季の成層圏極渦と成層圏突然昇温(SSW)、対流圏大気との関係性について調べた。両モデルで北半球冬季成層圏極渦とSSWの頻度は明瞭にSSTの影響を受け、El Niño時に極渦が弱まり(SSW頻度が増加し)La Niña時に強まった(SSW頻度が減少した)。ただしこれらの傾向は線形的ではなく、La Niña-Neutral間での変化は小さく、El Niño時に大きかった。モデル間でもENSOに伴う極渦応答は異なり、MRI-AGCM3.2Hで大きくMRI-ESM2.0で小さかった。これは対流圏のENSOテレコネクションを通じて成層圏へ伝播するプラネタリー波振幅にモデル間の差があるためと考えられる。北極振動指数(AO index)についてはEl Niño-La Niña間で線形的な変化が見られ、これは成層圏対流圏結合に加えて対流圏でのENSOテレコネクションが関係している可能性がある。QBOの影響に関して、赤道50 hPa東西風を指標に評価したが、QBO東風時に極渦が弱まり(SSW頻度が増加)、QBO西風時に強まる(頻度が減少)傾向があり、Holton-Tan現象が再現されていることが確認された。しかし、その振幅は再解析に比べ小さく、QBO影響に関するモデル再現性に課題があることが確認された。また、大規模アンサンブルデータを解析した際に、少ないメンバーを用いた場合の結果の不確実性が大きく、観測や再解析で得られた結論について注意が必要であることも明らかになった。