日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 東アジアの異常天候・都市災害と気候変動との関わり

2023年5月21日(日) 15:30 〜 16:45 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Masaru Inatsu(北海道大学大学院理学研究院)、日下 博幸(筑波大学)、竹見 哲也(京都大学防災研究所)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)

16:30 〜 16:45

[AAS10-05] 極端降水の環境場依存性に関するCMIP6モデルの検証

*千喜良 稔1高薮 縁1横山 千恵1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:極端降水、CMIP6

衛星由来の降水量データ(GSMaP)とERA5再解析データを用いて、降水量と、大気の湿潤度・安定度との関係を調べた。その結果を用いて、CMIP6モデルの極端降水の表現を検証した。本研究の目的は、モデルが物理的に正しく極端降水を表現しているのかどうかを検証することで、将来気候における極端降水の予測の不確実性を低減することである。
解析対象に含められるモデルの数を最大化するため、6 hourlyのスナップショットではなく、日平均データを用いた。大気の安定度と湿潤度の指標として、Surface Air Moist static energy Surplus (SAMS)とFree atmospheric precipitable water (FPW)の2つの量を定義した。この2つの指標には、鉛直解像度の粗い日平均データからも計算できるという利点がある。
FPWとSAMSの2つの変数に対し、降水量の2次元のビンを作成した。GSMaPとERA5の日平均データを用いた作成したビンは、3 hourlyスナップショットを用いて作成したビンと、定性的な特徴がよく似ていることが確認された。大気の不安定の度合いが弱いときに湿潤度が最大となる「くちばし」状の構造が見られ、極端降水はここで発生する。降水のパターンには、海洋上と陸上とで明瞭な違いがあり、海洋上では降水のピークは、くちばし状構造の上半分で見られるのに対し、陸上ではくちばし状構造の下半分で見られる。
CMIP6モデルの多くは、観測と再解析データの組み合わせに見られる構造を大まかに表現することに成功しているが、特に海洋上で、くちばし状構造を表現できず、極端降水の量を著しく過小評価するモデルが存在する。また、降水のピークの位置を再現できるモデルは限られていた。海洋上で極端降水の量を現実的に表現できるモデルは、陸上で極端降水を過大評価する傾向にあり、逆に、陸上で極端降水の量をよく表現できるモデルは、海洋上の極端降水を過小評価する傾向が見られた。現状、海洋上と陸上の両方で極端降水の量を適切に表現するモデルは存在しない。