日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37] 衛星による地球環境観測

2023年5月25日(木) 09:00 〜 10:30 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、松永 恒雄(国立環境研究所地球環境研究センター/衛星観測センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

09:00 〜 10:30

[ACG37-P11] 衛星搭載ハイパースペクトルセンサによるトノサマバッタの群れの検出

*山崎 敦夫1岩崎 杉紀1 (1.防衛大学校)


キーワード:バッタの群れの検出、トノサマバッタ、ハイパースペクトルセンサ、PRISMA、蝗害

トノサマバッタやサバクトビバッタといったバッタの仲間は最も身近な害虫の一種である。バッタはしばしば大群を形成し、農作物に被害を与える。バッタによる大規模な食害は蝗害と呼ばれ、世界各地で報告されている。最近の例では、2020年に発生したサバクトビバッタの大発生により、アフリカ東部からアジア南部にかけての広い範囲で被害が発生した。日本では関西国際空港において1期島が建設された1994年から1997年と、2期島が建設された2007年の二度に渡ってトノサマバッタが大発生した。それぞれにおいて生息していたバッタの個体数は、1期島では1338万個体、2期島では3884万個体と推定された。
バッタは通常「孤独相」という状態で、群れを作らず、交尾時以外は互いに避け合う。しかし、バッタの生息密度が高くなると、個体間の接触回数が増え、「群生相」に変化する。群生相のバッタは群れを形成し、飛翔能力を向上させる。
蝗害対策として、現在は人の目でバッタの分布を監視しているが、これでは広大な地域を高い解像度で継続的に監視することは困難である。そこで本研究では、衛星搭載ハイパースペクトル(HS)センサを用いた群発性バッタの検出方法を提案する。HSセンサとは数百の連続した波長ごとに計測が可能な光学センサである。
群生相のバッタのいる地表のスペクトルは、バッタのいない地表のスペクトルとバッタのスペクトルが混在しているはずである。前者として、HSセンサを搭載したPRISMA衛星で測定したスペクトルを利用した。後者は、実験室でPicaLとHySpex SWIR-640を用いて測定したものである。これらを用いて蝗害が発生している地表のスペクトルをあらかじめ計算し、Look-Up Table (LUT)とした。LUTはバッタの面積と地表面積の比であるバッタの被覆率(LCR: Locusts Coverage Ratio)ごとに計算された。次に、蝗害が発生している場所の地表のHS画像を、PRISMAによって計測されたバッタのいない地表のスペクトルとバッタのスペクトルを用いて擬似的に再現し、これを疑似HS画像とした。
LUTを用いて擬似HS画像のLCRを求めるために、4つのスペクトル類似度指標を適用した。使用した指標は、Euclidian Distance (ED)法、Spectral Angle Matching (SAM)法、Spectral Information Divergence (SID)法、Cross-Correlogram Spectral Matching (CCSM)法の4種類である。その結果、SID法を用いたLCRの推定が最も正確であることがわかった。
また、SID法を用いた群生相のバッタ検出能力の評価のため、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線のAUC(Area Under Curve)を計算した。その結果、30m×30m(900 m×900 m)の1画素(100画素)において、LCRが3%(1%)以上の場合、AUCは0.9を超えることがわかった。