日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 海洋と大気の波動・渦・循環の力学

2023年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (1) (オンラインポスター)

コンビーナ:青木 邦弘(気象庁 気象研究所)、長船 哲史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[ACG38-P04] Subinertialな外部潮汐から内部潮汐へのエネルギー変換率

*田中 祐希1 (1.福井県立大学 海洋生物資源学部)

キーワード:地形性捕捉波、日周潮汐、乱流混合、モード分解、クリル海峡

地形に捕捉されたsubinertialな日周期内部潮汐は、中・高緯度海域における乱流混合の主要なエネルギー供給源の一つである。Superinertialな内部潮汐が常に傾圧的な鉛直構造を持つのに対し、subinertialな内部潮汐は順圧的な鉛直構造も持ち得る。このため、subinertialな内部潮汐の励起率は、従来の順圧–傾圧エネルギー変換では正確に推定できない可能性がある。本研究では、順圧モードを外部モードと地形性モードに分解し、後者を傾圧モードとともに内部モードの一部に分類する新しいエネルギーダイアグラムを提示する。新たに定義された地形性モードに対するエネルギー方程式を導出することで、subinertialな外部潮汐から地形に捕捉された内部潮汐へのエネルギー変換率を定式化する。一連の数値実験によって、この定式化が様々なケースにおけるエネルギー変換率をうまく推定できることを確認するとともに、傾圧モードと地形性モードの相対的な重要性は海底地形や密度成層に依存して大きく変化することを示した。さらに、この新たな外部–内部エネルギー変換は、subinertialな内部潮汐に対して従来の順圧–傾圧エネルギー変換よりもかなり大きな推定値を与えることが明らかになった。この定式化を日周潮汐に起因する強い乱流混合が存在するクリル海峡における現実的な数値シミュレーション結果に適用したところ、外部モードは傾圧モードと地形性モードに同程度の大きさで変換され、同海域におけるエネルギー散逸の大部分を担っていることが示された。これらの結果は、本研究の新しい定式化を用いてsubinertialな内部潮汐の励起率の全球分布を再推定するとともに、その散逸機構を明らかにしていくことの必要性を示している。