日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 全球海洋観測システムの現状と将来:自動観測と船舶観測の可換性

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:00 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、桂 将太(東京大学大気海洋研究所)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)、座長:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、桂 将太(カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)

10:50 〜 11:05

[ACG44-01] 船舶観測、アルゴフロート、および数値モデルを用いた黒潮と水塊の時間変動の研究

★招待講演

*川上 雄真1中野 英之1豊田 隆寛1坂本 圭1浦川 昇吾1杉本 周作2 (1.気象研究所、2.東北大学)

キーワード:船舶観測、アルゴフロート、海洋モデル、黒潮、水塊

北太平洋亜熱帯循環(以下、亜熱帯循環)の西端部には、西岸境界流である黒潮が流れている。また、亜熱帯循環の内部には、亜熱帯モード水(Masuzawa, 1969)、中央モード水(Nakamura, 1996; Suga et al., 1997)、および回帰線水(Cannon, 1966)といった水塊が広く分布している。膨大な海水・熱を輸送する黒潮や表層で大きな体積を占める多様な水塊は、亜熱帯循環域における3次元的な海洋構造(水温・塩分の分布や海水循環)やその変動・変化を理解するための鍵であると考えられてきた。

発表者はこれまで、気象庁の長期船舶観測資料(東経137度線、東経165度線)やアルゴフロートの水温・塩分プロファイルといった観測データをもとに、亜熱帯循環域における表層海洋構造の変動・変化を調べてきた。例えば、高精度かつ高鉛直解像度な船舶観測の資料から、正味黒潮流量の様々な時間スケール(数年から10年以上のスケール)の変動や主水温躍層・塩分躍層における低塩化傾向などを報告している(Kawakami et al., 2020; Kawakami et al., 2022)。一方、広範囲に展開されたアルゴフロートのデータからは、水塊の形成や分布の時間変動を3次元的に調べてきた(Kawakami et al., 2016)。

さらに、上記資料解析から得られた海洋変動に関する理解をより深めるため、発表者は海洋モデルを用いた研究も行っている。特定の季節の大気変動だけを反映するように作成した大気外力を用いて感度実験を行うことにより、黒潮や水塊の時間変動が主に(暖候期ではなく)寒候期の大気変動に起因することを示した(Kawakami et al., 2023)。

本発表では、これらの研究を紹介するとともに、解析をする中で見えてきたそれぞれの観測プラットフォームの強みとその相補性、および、多様な観測データと数値モデル実験を組み合わせた研究の可能性について議論したい。