日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG45] 海洋表層-大気間の生物地球化学

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:亀山 宗彦(北海道大学)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター)、小杉 如央(気象研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[ACG45-P01] 水圏環境下における高感度酸素消費速度定量法の開発

*伊藤 昌稚1角皆 潤1中川 書子1三歩一 孝1、渡邊 悠斗1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:酸素同位体比、微生物群衆呼吸

大気中の約20%を占める酸素 (O2) は強力な酸化力を持ち、地球表層環境を特徴づける物質の一つである。陸域ではO2が不足した還元環境となることはほとんどないが、海洋、湖沼、地下水といった水圏環境においては、局所的にO2が枯渇し、還元環境となることがある。水中の溶存O2濃度は水質や栄養塩量を規定する主要因子であり、溶存O2の不足は水質の劣化や生物の大量死、青潮等の環境問題に直結する。従って、溶存O2の消費速度やその制御因子を明らかにすることは、環境科学的にも、また生物地球化学的にもきわめて重要である。水試料中の溶存O2消費速度は、従来は、閉鎖環境下における一定時間の培養に伴う各水試料のO2濃度の変化を定量することで測定されてきた(暗瓶法)。しかし、有光環境の試料では、O2の生成反応である光合成が同時進行する可能性があり、このため光を遮断するなど現場とは環境を変えて培養する必要があった。また、感度が低く、応用範囲が限られていた。
そこで本研究は、酸素の微量安定同位体である17O2をトレーサーとして用いた酸素消費速度定量法を開発した。この手法は、酸素原子中に0.04%しか存在しない17Oを濃縮した17O2を密閉容器中に分取した水試料に添加して約10%として、培養期間中に容器内で進行する呼吸反応(O2+CH2O→H2O+CO2)に伴って増大した H217O量を超高精度で定量化することで酸素消費速度を求める手法である。これにより従来の暗瓶法では不可能であった有光下における酸素消費速度定量が可能になった。なお、酸素消費反応の進行に伴うH2Oのδ17O値の変化は最大でも0.2‰程度と極めて小さく、このため逆反応である光合成が同時進行することで引き起こされる17O2濃度の変化は無視できる。この方法を用いて、伊勢湾における酸化速度を実測し、各水試料間のO2消費速度を比較し、その制御要因を考察した。