日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW21] Surface and subsurface hydrologic models: Technical advances and applications for water management

2023年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:徳永 朋祥(東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻)、劉 佳奇(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻)、Philip Brunner(The Centre for Hydrogeology and Geothermics of University of Neuchatel, Switzerland )、Rene Therrien(Laval University)、座長:徳永 朋祥(東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻)、劉 佳奇(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻)、Philip Brunner(The Centre for Hydrogeology and Geothermics of University of Neuchatel, Switzerland)、Rene Therrien(Laval University)



15:35 〜 15:55

[AHW21-05] 地下水流動モデルのみによる流出現象の表現力向上

★招待講演

*三浦 陽介1,2芳村 圭1,3,4 (1.東京大学 生産技術研究所、2.気象研究所、3.東京大学 工学部 社会基盤学科、4.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:パラメタリゼーション、飽和不飽和浸透流、粗い格子、急峻な地形、日本全域

地球システムモデルの一つのコンポーネントとして地下水流動モデルを開発している。この地下水流動モデルは飽和不飽和浸透流の方程式に基づいたモデルであり、全球への適用を目指している。全球への適用にあたっては計算格子数が多くなるため、粗い格子を採用せざるをえない。しかしながら、粗い格子は水文過程の表現力が低下する。特に、急峻な地形を有する場所の流出現象が顕著に悪化すると考えられる。簡単な解決方法は細かいサイズの格子を用いることであるが、全球への適用性が落ちてしまう。そのため、粗い格子を採用しながらも水文過程の表現力を落とさないパラメタリゼーションが重要である。本研究で使用している地下水流動モデルは陽に地表流を解いていない。地表流は二次元の現象であるが、地下水流と比較すると流れが速い。そのため、三次元の現象であり、遅い流れの地下水流と結合すると、計算時間が地表流で規定されてしまう可能性がある。山間部では地表流は斜面を下り、河川へと流入すると考えられ、平野部では地表流のほとんどは河川流と氾濫流であると考えられる。全球スケールで河川流や氾濫現象を表現できるモデル(例えば、CaMa-Flood)が開発されてきていることから、これらのモデルと結合できるモデルを開発した。
本研究では、水文過程のうち流出に着目し、1分グリッド(約2km)内の地形情報を用いたパラメタリゼーションの方法及びその結果を示す。パラメタリゼーション方法は以下の通りである。はじめに、1分グリッドに含まれる全標高(30mグリッド)を昇順に並べた累積密度関数を作成する。次に、この累積密度関数を最小二乗法で最適化することで、1分グリッドごとのパラメータを求める。このパラメータをモデルへ入力することで、地下水位に応じた1分グリッド内の地表面湿潤面積を求めることができる。この面積と地表と地下の水位差から流出量を求める。この時の地表水位は計算における非線形ループでの1ステップ前の地下水位とし、地表水位と地下水位はほぼ連動していると仮定している。パラメタリゼーションの妥当性確認は大きな標高分布を有する日本全域を対象として実施した。流出を計算するため、陸モデルであるMATSIROの計算結果の一部を本モデルで受け取った。計算された流出を河川モデルであるCaMa-Floodへ入力し、観測されている河川流量との比較を実施した。結果的に、パラメタリゼーションを実施しない場合と比較し、河川流量の再現性が向上した。